鳳山雑記帳はてなブログ

立花鳳山と申します。ヤフーブログが終了しましたので、こちらで開設しました。宜しくお願いします。

ロッキード・マーチン F-35 ライトニングⅡ   (前編)

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 老朽化の進むF-4EJ改ファントムの後継機種として導入が決定したF-35F-22ラプターに次ぐ実用ステルス戦闘機であり米軍を中心に将来はF-4やF-16のような西側標準戦闘機になる事が確実な高性能機です。しかし、価格が高騰した事から、主開発国のアメリカ以外で導入が決定しているのは開発費用出資レベル1(10%程度)のイギリスと、レベル2(5%程度)のイタリア、オランダ以外では常に臨戦態勢で優先顧客のイスラエル(90機程度を予定)と、最近尖閣問題でキナ臭くなってきた日本(42機+100機[予定])くらいです。韓国も日本のまねをして導入しそうですが、これは価格の問題に加え支那への機密情報漏洩疑惑(というより確信犯)もある事から流動的です。
 
 私は最初、F-XにF-35を導入するのに反対でした。というのは下らない武器輸出三原則が原因で開発に加われなかった日本が取得できるのは優先顧客が取得した後になるのではないかという懸念からでした。ところが開発費が高騰しレベル3(開発出資レベル1~2%)諸国の中からキャンセルや導入計画縮小が相次いだ事から、後だしジャンケンの日本はレベル1国(=イギリス)並の優先顧客に格上げされたのです。アメリカにとっては優良顧客ですからね(笑)。
 
 まさに日本にとっては理想的な展開になったと言えます。しかも最初の4機だけ完成品購入で残りの38機は日本で組み立て、レーダーやエンジンなど50%も日本で生産できるという好条件。部品生産にも参加でき、重整備拠点(日常のメンテナンスだけでなく本格的な整備もできる)までできるというのですから嬉しい限りです。日本の航空自衛隊以外に在日米軍とオーストラリアのF-35(ただし導入は流動的)も整備できます。韓国はこれに反発し、重整備はアメリカに送ってやるそうですから莫大な維持コストがかかりそうですね(苦笑)。
 
 
 それでは、F-35の特長を見て行きましょう♪
 
 
 
①ステルス性
 
 RCS(レーダー反射断面積)という言葉があります。レーダーに反射する断面積でこれが小さいほどステルス性が高いと言えます。軍事機密なので詳しい事は分かりませんが、一説ではF-22ラプターRCSが昆虫くらいの大きさ(0.0005㎡)しかないと言われています。一方、非ステルス機のF-15EストライクイーグルはRCS10㎡。ある程度ステルス性に考慮したF/A-18E/FスーパーホーネットでさえRCS1㎡です。
 
 F-35に関しては、ラプター並みにあるという説とラプターには劣るものの小鳥程度のRCSしかないという説があります。どちらにしろ、現用戦闘機ではトップクラスのRCSです。
 
 一般には誤解があるようですが、ステルスとはレーダーに見えないのではなく見えにくい能力なのです。これは機体の形状やレーダー吸収塗料などの素材でレーダー波をある特定方向に逸らしたり吸収したりして敵のレーダに反射しにくいようにする技術です。
 
 RCSが低ければ、敵がこちらの存在に気付く前に先に発見することができます。そして現代の航空戦では先に発見し先制攻撃した方が圧倒的に有利です。F-22ラプターが日米合同演習の模擬空戦で自衛隊のF-15Jに圧勝した理由も理解できますよね。
 
 
②機動性
 
 F-35は格闘戦(ドッグファイト)でラプターは言うに及ばずロシアのSu-35やユーロファイタータイフーンに劣ると言われます。これを理由に導入に反対した人もいると思いますが、現代の航空戦はベトナム戦争中東戦争のようなドッグファイトで航空戦が決する事はほとんどありません。AWACS(早期警戒管制機)を中心にしたレーダー警戒網で大遠距離から敵機を発見し、データリンクで管制下の戦闘機群を動かし敵の射程外からアクティブレーダーホーミングのAIM-120AMRAAMなどの撃ちっぱなし式の中距離空対空ミサイルを発射します。極端な話、レーダー探知した機ではなく別の戦闘機がミサイルを発射しても良いわけです。
 
 ではドッグファイトは発生しないかというと、そうでもなく戦闘機はあらゆるケースに対応できなければなりません。だからF-22ラプターは推力重量比の高い大推力エンジンを搭載し、機動性も現用機でトップクラスを誇るのです。ラプターはあらゆるケースにおいて最強だとされる所以です。
 
 一方、F-35は要撃戦に特化したF-22と比べると戦闘攻撃機寄りのマルチロール機ですから運動性は劣ります。Su-35やタイフーンに劣るのも事実でしょう。しかしそれを補って余りある電子戦能力を持ちます。後で詳しく述べるのでここでは触りだけ。
 
 ドッグファイトがなぜ必要かというと、サイドワインダーなどの赤外線ホーミングミサイルで敵の背後に回った方が有利だからです。また背後につかれた方も、敵ミサイルを交わすためにフレアを放出するとともに、高機動で逃げなければなりません。しかし最近の短距離ミサイルはオフボアサイト(非砲向照準)能力をもったものが主流となり、別に敵機の背後につかなくても発射できるのです。極端な話、探知さえできれば背後にある敵機に向かってミサイルを発射しても、ちゃんと曲がって背後の敵機にミサイルは飛んでいきます。
 
 ただ敵のミサイルを避けなければなりませんから、最低限の機動性は必要です。F-35はそれには十分な機動性を持っていると考えられます。F-35はP&W F135エンジンを搭載しドライ出力135kN、A/B(アフターバーナー)出力191kNを誇ります。これは第4.5世代の双発のラファール(151.24kN)やタイフーン(178kN)よりも優れています。
 
 
③速力
 
 F-35は最高速度マッハ1.7(A型、C型。B型はマッハ1.6)しか出せない遅い飛行機だという人も多いと思います。これも勘違い。最高速度というのはアフターバーナーを焚いて初めて出せる速度で、莫大な燃料を使います。アフターバーナー最大出力で飛べるのはせいぜい5分くらい。それよりも重要なのは巡航速度といってドライ出力(ミリタリー出力)という普段の推力で飛べる速度。ドライ出力で超音速巡航(スーパークルーズ)ができるF-22やタイフーンは凄いと思いますが、操縦するのは人間ですから音速を超えた高速でドッグファイトしたら人間が先に壊れてしまいます。一説では現用戦闘機は9Gまで耐えれるそうですが、人間は最高条件でも7Gが限界だそうです。普通なら4Gくらい。
 
 現代の航空戦でもドッグファイトはせいぜいマッハ0.8から0.9という世界です。F-35はそのくらいは優に出せるので問題ないでしょう。現用戦闘機でも最大速力マッハ2出ない機体が多いのはそんな理由です。
 
 
 
 長くなるので、前篇はここで終わります。アビオニクス(電子機器)関係は後編で語ります。