鳳山雑記帳はてなブログ

立花鳳山と申します。ヤフーブログが終了しましたので、こちらで開設しました。宜しくお願いします。

米支航空戦シミュレーション

イメージ 1

 最近、河津幸英さんの『米中軍事衝突』(アリアドネ企画)という本を読みました。私は昨今の軍事系ライターの中では河津氏を故江畑謙介氏なみに信頼しているのでなかなか興味深い内容でした。

 この本では尖閣有事、あるいは台湾有事をきっかけとしてアメリカと支那が全面戦争になった場合どういう展開になるかを航空戦に限定して述べてあります。米空軍の機種ごとの保有数を現役、州兵、予備役ごとに分類した一覧表など他では見ない貴重な資料が満載されていてとても勉強になりました。やや専門的な説明が多いですが、米空軍・支那空軍それぞれの現状をよく理解できると思われるので、興味のある方は一読をお勧めします。

 ただ本書は、米支全面戦争という設定にやや無理があり現実にこうはなりにくいような気はします(苦笑)。が、なかなか鋭い考察もあり是非皆さんに一部だけでもご紹介したいと思って記事にした次第です。私は軍事は素人でして特に支那人民解放軍に関する知識はほぼゼロなんで、そこらあたりは勘案しながらお読みください。


 アメリカが戦争を始める場合、サイバー空間は別として最初に動くのは大量の巡航ミサイル(艦船発射、潜水艦発射)とB-2ステルス戦略爆撃機です。これらによってまず敵のレーダー網、通信中枢、指揮中枢を叩いて盲目状態にしたうえで、次に来るのが空軍基地、補給基地、現地部隊に対する空爆です。湾岸戦争イラク戦争はファーストストライクで敵の目と神経を奪いほぼ決着がつきました。後は掃討戦にすぎなくなって圧倒的空軍力を十分に生かすアメリカの最も得意とする戦いになったのです。

 支那人民解放軍は、おそらくソ連型の防空コンプレックスを布いていると思われます。兵器体系(特に対空ミサイル関係)が旧ソ連・ロシア製兵器だからです。しかし、支那湾岸戦争イラク以上の重厚な防空体制だと予想されます。

 巡航ミサイルはともかく、航空機が対地攻撃をするためには支那本土の奥深くまで侵入する必要があります。叩くときは支那全土の奥深くまで同時に叩かなければなりません。でないと意味がないのです。高度5000m以下で侵入する場合支那は各種対空ミサイルを持って反撃します。ですから侵入高度は5000m以上。支那人民解放軍で、高高度迎撃能力を持っているのはロシア製のS-300PMU1/2のみ。当然支那は大量のS-300を海岸線沿いにびっしりと配備していますが、どうしても重要拠点である都市を中心に配備しないといけないため山間部や過疎地域が手薄になります。S-300ミサイルの発射基地はすでに偵察衛星無人偵察機などですべて位置が特定されています。これらの基地から最大射程を同心円上に延ばした場合、3か所の防空網の隙間ができる事が分かっています。

 これらは、北から山東半島の付け根と淮河河口のちょうど中間にある塩城ギャップ、浙江省福建省境界の山岳地帯温州ギャップ、福建省広東省境界の掲陽ギャップと呼ばれます。米空軍機は支那防空網の隙間を廻廊として支那本土奥深くに侵入し敵の目と神経を潰す攻撃をするのです。

 しかし、支那も馬鹿ではありません。当然防空網の隙間を承知しており東シナ海沿いに平行に走る前衛航空基地群、それと並行して200km後方にある中盤航空基地群、さらに200km後方の後衛航空基地群の3つのラインで米空軍の侵入を防ごうと考えています。そして例えば温州ギャップに最も近い空軍基地には支那空軍で現状一番信頼性の高いロシア製のSu-30多用途戦闘機を集中配備しているのです(例:水門基地)。

 これらの基地は、米軍の巡航ミサイルによる攻撃を想定してすくなくとも24基の耐爆シェルターを築いています。これは航空連隊(日本で言うところの飛行隊、欧米のSquadronにあたる)の戦闘機保有定数24機と合致します。支那の本気度が分かりますよね。

 ですから、米支の最初の航空戦はこの3つのギャップを巡って争われるはずです。とくにアジア最大の航空基地嘉手納基地から最短距離の温州ギャップがもっとも激戦になる可能性が高いそうです。そこで地図をよく見ると温州ギャップのちょうど前に尖閣諸島がある事に気付かされます。もし尖閣支那のものになり、前哨レーダー基地を設ければ温州ギャップの防衛はかなり有利になります。その意味でも尖閣支那の最重要目標の一つなのです。

 日本は、この事実を冷静に受け止める必要があります。日本の国防上尖閣は絶対に支那に奪われてはならないのです。

 米空軍は、湾岸戦争の時のイラクほど支那を舐めていないと思います。河津氏は支那のレーダー網を潰す役目としてF-22F-35からなるワイルドウィーゼル部隊を編成する可能性が高いと読んでいます。ところがF-35はまだ戦力化しておらず、現状ではF-16がその役目を担っているため今開戦すると米空軍も少なからず被害が出ると想定しているそうです。

 世界初の第5世代戦闘機であるF-22ラプターは、米空軍のシミュレーションでは航空戦闘で第4世代に比べ8倍の戦闘能力を持つそうです。が、対地攻撃では第4世代に比べ4倍のアドバンテージしかありません。一方、F-35ライトニングⅡは航空戦闘で第4世代に比較して4倍のアドバンテージですが、対地攻撃では8倍も優れているそうなのです。

 F-22とF‐35が組んで互いの長所を生かす運用をすれば、おそらく支那空軍は手も足も出ないと思われます。もちろん支那もJ-20などのステルス戦闘機を開発しておりある程度は対抗できるかもしれませんが、アビオニクス(電子機器)関連の技術ではアメリカに一日の長があります。このギャップは当分埋まらないだろうというのが世界の見方です。

 支那としてはF-35が戦力化される前に戦争を始めた方が有利ですが、一方自分の方もJ-20が戦力化していなければ甚大な被害を受け空軍が壊滅する危険性もあるので痛し痒しなのです。ところで今思ったんですがF-22が第4世代に比べ8倍優れているという意味は、AIM-120C AMRAAMを6発、AIM-9X サイドワインダー2000を2発で計8発内蔵できるという事から来ているのかも?側面のウエポンベイはAMRAAMも積めたよね?F-22がステルス能力を生かして全弾命中という単純な想定だとしたらふざけていますね(苦笑)。まあそんな安易な想定ではないと思いますが…。


 ともかく、支那が負けない(決して勝つではない)ためには、アメリカの強力なファーストストライクを凌ぎきる事。それに失敗したら、制空権を奪われ湾岸戦争イラク戦争と同じ運命になります。そのために支那は開戦奇襲で巡航ミサイルによる米軍基地(ついでに自衛隊基地も)攻撃をしてくるかもしれません。が、そうなったらアメリカもブチ切れ海南島支那戦略原潜部隊は全滅でしょうね。常時追尾してますから。

 日本は、最悪の想定をしておかなければなりません。米軍基地問題で沖縄左翼を好き勝手に暴れさせている場合じゃありませんよ。スパイ防止法を早く作ってテロリストとその予備軍をさっさと処分すべき。私は極東における戦争の可能性は非常に高いと思っています。いつまでも平和ボケでは済まされません。