鳳山雑記帳はてなブログ

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日本政府・軍部がもっと柔軟だったら戦争しなくてよかった!!!

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 私が最近読んだ中でかなり衝撃を受けた本があります。「陸軍燃料廠」(石井正紀著・光人社NF文庫)という本です。

 陸軍燃料確保に尽力した石油技術者たちの戦いを描いた本ですが、そのなかで満州地域で1959年に発見された莫大な埋蔵量を誇る大慶油田を何故日本が発見できなかったかについて詳しく記してありました。


 歴史を知っている後世の我々から見れば、先の大戦の原因は日本の大陸進出に怒ったアメリカが石油禁輸をしたのが直接の理由だと知っています。言わば日本が戦略物資である石油確保をするために死に物狂いで起こした戦争でした。

 戦前の石油備蓄は民間も合わせて700万トンちょっと。(別資料では海軍備蓄650万キロリットル、陸軍備蓄120万キロリットルで計770万キロリットル)
 連合艦隊が一回総出撃するだけで80万トンも消費するという厳しい現実がありました。アメリカを中心としたABCD包囲陣の中で座して死を迎えるくらいなら、石油がまだあるうちに乾坤一擲の勝負に出ようと思った当時の指導者たちを責めるのも酷でしょう。外交上のミスと危機管理能力の無さは断罪すべきですが。


 負ける戦争をなぜやったのかと非難する愚か者もいますが、おそらくこのような現実など知らないはずです。(知ってて言っているのなら白痴レベルですが…苦笑)



 しかし、もし大慶油田が戦前に発見されたら事情は違ってきたでしょう。年間で4~5000万トンの生産量があるなら日本の石油需要を補って余りあるくらいです。


 地図を見るとハルピンとチチハルの間に広がる松遼盆地の湿原に大慶油田はあります。素人考えならこんな見つけやすい場所にあったらすぐ見つかるだろうと考えがちですが、本書を見ているとそうは事情が許さなかったんだなと暗澹たる気持ちになりました。


 当時の主流の学説では「石油とはかって海だった底に泥とともに堆積した藻類やプランクトンの遺骸中の有機物が重合してできた油母(ケロジェン)と呼ばれる複雑な高分子が、地熱の作用を受けて分解して出てきたものであり、油母は地殻変動で地殻が波状にたわんでできる背斜と呼ばれる波状の突き上げたところに限ってたまる」といういわゆる海成腐泥起源説が主流でした。

 そのために中国大陸には石油がないという先入観に囚われ、南方の石油資源確保のために戦争に突入していったのが現状でした。


 一部の技術者の間では「もしかしたら満州で石油が出るかもしれない」という声もありましたが、硬直した上層部が受け付けなかったために発見できませんでした。

 それも何千メートルも掘削しなければ見つからないのではなく、たった800メートル掘ればよかったのに!


 こんなことを言うと「何を夢みたいなこと言ってるんだ」とお叱りを受けそうですが、実は昔から石油が出そうだという調査結果があったんです。

 本書では宋代の中国の学者が書いた本も紹介していますが、それよりも大正8年日本人が書いた「支那の鉱山」(日本銀行調査局編)にちゃんと「黒竜江省安達県ゴルロス後旗バルガソムで石油井二抗を発見した」と書いてあるのです。

 この文章に注目して、真摯な態度で調査していたらと思うと無念でなりません。というのもこの場所こそまさに大慶油田の発見された場所だったからです!


 それなのに、学説に反するからとまともに取り合わなかった政府や学界の硬直性には怒りを覚えます。後から聞くと中国が大慶油田を発見できたのは、柔軟な考えで文献(日本のものも含む!)を漁って調査したからだと聞くと尚更です。


 それもこれも日本に将来起こるであろう危機に対する備えが無さすぎたからでした。石炭から石油にエネルギー体系が激変したのに、日本で石油がほとんど産しないという事実を当時の為政者はどこまで考えていたのか!しかも石油需要の8割は対米依存だったんですよ!!!

 せめて1000万トン以上は備蓄しておくべきでしょう。精製すると劣化が早いというのなら原油の状態でいいではないですか!なんでやらなかったのか!陸軍はともかく海軍は石油が無ければどうしようもないんですから政府を動かしてもやっておくべきでしょう。

 現代もそうですが、戦前も危機管理能力の無さが露呈していて暗澹たる気持ちになりました。


 日本人は戦争の惨禍を反省するのなら、もっと危機管理能力を向上させるべきでしょう。ソマリアの海賊対策に反対するなんて理解できませんよ。日本が海洋国家で海外からの輸入に依存している資源小国だという事実を冷静に見つめたらその根幹である海上航行の安全を無視できるんですか?

 一事が万事、憲法9条があったら平和になるなんて夢物語は早く辞めてまともな国になってくださいよ。食料自給率の問題も危機管理能力があったら現在のような無様な体たらくにはなってないでしょ。



 ともかく、日本の将来を真剣に考える人に「陸軍燃料廠」お勧めします!