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OR(オペレーションズ・リサーチ)とイギリスの先進性

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 皆さんはOR(オペレーションズ・リサーチ)という言葉をご存じですか?今ではすっかりビジネス用語になってしまいましたがもともとはイギリスが第2次大戦直前に編み出したもので戦争をいかに効率よく進めるかという技法でした。もっともイギリスではオペレーショナル・リサーチと言うそうですが。


 日本語にすると難しいのですが、「作戦研究」と訳すより「問題解決の技法」の方がしっくりします。

 イギリスは物理学者P・M・S・ブラケットを中心に生理学者、物理学者、数学者、測量技師など民間から20名のスペシャリストを集めそれを軍人が補佐するという体制でORチームをスタートさせました。軍部主導ではなく民間人が主役というところが他国には真似できないところです。民主主義が進んでいるということより、それだけイギリス人がリアリストだという証拠でしょう。イギリスは軍需大臣も民間人から採用し、軍部の要求を現実的な理由をあげて突っぱねたくらいですから。

 具体的にこのORチームが何をしたか見ていきましょう。


 まずバトルオブブリテンに際して、ドイツ空軍の爆撃に対し防御する優先順位、それに関する効率的な対空砲、防空戦闘機の配備などを指摘しました。これによりイギリスは少ない航空戦力で効率的に防御しイギリス本土を守り抜きます。

 このとき、主力戦闘機のスピットファイアの改良と、新戦闘機のホーカータイフーン、テンペストの量産のどちらが有効かという問題で、スピットの発展性とホーカータイフーンの発展性の無さを見抜き、前者の改良・大増産を進言しました。結果的に正しかったことは歴史が示しています。


 また、護送船団において少数の船団を数多く出すのと、できる限り多くの船団を一つにまとめて運用するのはどちらが効率が良いか、戦訓と数式をあげての計算から後者に軍配を挙げたのも彼らでした。具体的に出港する間隔、Uボートの被害を最も受けにくいコース、護衛艦、護送空母の最適配置、さらには最も効率の良い対潜作戦の方法までアドバイスしていたところには、たいへん驚かされます。


 さらに、戦局が有利に傾いてからでも戦略爆撃の目標選定、ドイツ交通網の弱点の洗い出し、敵迎撃戦闘機に対する防御で最も効率の良い編隊の組み方、護衛戦闘機の配置などイギリスを戦争の勝利に導くために大きな貢献をしました。


 ORの有効性の証明は、アメリカが1942年に同様のものを採用したことでも示されています。そして戦後はビジネスの世界でも広く採用された技法になります。


 反対に日本では絶対に実現できないものでした。民間人が軍人よりも上になることなど絶対に容認できなかったでしょうから。そして軍人主導になると自由な討議もできず、画期的な意見など出ることはなかったでしょう。やはりこれは民族性が根本にあるのかもしれません。