鳳山雑記帳はてなブログ

立花鳳山と申します。ヤフーブログが終了しましたので、こちらで開設しました。宜しくお願いします。

スピットファイア グリフォン

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 バトル・オブ・ブリテンで、ドイツの侵略を撃退した救国戦闘機スーパーマリン スピットファイア。名エンジンと呼ばれたロールスロイス マーリンエンジンを搭載した当機も日進月歩の戦闘機開発競争の中で次第に力不足が目立ってきました。
 
 そこで空軍当局は、当時完成していたロールスロイス社の新エンジン「グリフォン」を搭載するスピット開発を命じます。ただし戦時中の事、最小限の改造で済ませるという条件付きでした。
 
 グリフォンエンジンはたしかに2000馬力級の優秀エンジンでしたが、上記の条件のために重力バランスなど十分検討されないままかなり無理して開発されました。
 
 こうして完成した機体は、従来のマーリンスピットと比べノーズがほっそりしていていかにも高速機というイメージがあります。実際最初の量産型Mk14で740km/hという驚異的なスピード能力を示しました。
 
 空戦性能もこれまでのマーリンスピットをあらゆる面で上回り、連合軍でトップクラスの優秀機でした。
 
 ところが、イギリス軍パイロットには不評だったようです。なぜなら能力向上の代償として燃費が悪くなり、もともと短い航続距離がさらに短くなりました。マーリンエンジンに最適になるよう設計されていたため重力バランスもおかしくなり、操縦しにくい機体となりました。
 
 これは空軍当局が開発期間を短縮するために機体構造をなるだけいじらせなかった弊害でした。
 
 大戦後期は、イギリス本土上空の空戦は少なくなりドイツ本土に侵攻する爆撃機隊のエスコート任務が主になりましたから、足が短く防空戦闘しかできないグリフォンスピットは無用の長物と化しました。
 
 
 これならマーリンエンジンを搭載したアメリカのP‐51マスタングのほうがあらゆる意味で上のような気がします。ちなみに両者を比較すると
 
(左 スピットファイアMk14E              右 ノースアメリカンP‐51D)
 
エンジン:ロールスロイスグリフォン2095hp     バッカードマーリン(マーリンのライセンス生産)1695hp
最高速度:720km/h                                      703km/h
上昇限度:13560m                    12770m
航続距離:740km                     2655km
武装:   12.7㎜×2                   12.7㎜×6
       20㎜×2             
       爆弾227kg×1                爆弾454kg×2、または5インチロケット弾×10
 
 
 速度こそ勝っていますが、武装はほぼ互角、一番肝心な航続距離で3倍以上の差があります。対地攻撃力もマスタングは十分な能力があり、総合的にマスタングに軍配をあげざるを得ません。
 
 防空戦闘しかできないグリフォンスピットよりマスタングがはるかに使いやすかったでしょう。実際英空軍もエスコート任務にはマスタングを使ったケースが多かったそうですし…。最初にマスタングにマーリンエンジンを載せたのもイギリスですしね(苦笑)。
 
 グリフォンスピットが活躍しなかった方が、結果的には良かったのかもしれません。しかし抜群の空戦性能を持ちながらあまり活躍できなかったグリフォンスピットは、英国戦闘機ファンの間でも惜しまれています。
(私はその分ホーカータイフーン、テンペストが活躍できたので嬉しいですが(笑)。グリフォンスピットが長い足を持っていたらこちらは立つ瀬がないですもん(爆)。私の大好きなホーカーシーフューリーちゃんはテンペストから発展したんだぞ!えっへん)