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マリンチェ 売国奴か運命に翻弄された女か?

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 最近世界史面白エピソードシリーズが続いていますが、実は欧州史でシリーズものを予定していましてそれまでの箸休めとお思いください。

 マリンチェという女性ですが、あまり聞いたことがない名前だと思います。1502年頃生まれ1527年あるいは1529年死去しています。どちらにしろ20歳台で亡くなっているわけで短い生涯でした。出身はメキシコ。世界史に詳しい方ならご存知だと思いますが、まさにスペイン人コルテスがアステカ帝国を滅ぼした時代です。

 マリンチェはパイナラの首長の娘に生まれました。ところが幼くして父親が死に、再婚した母親は連れ子であるマリンチェを邪魔者扱いしタバスコ州の村に奴隷として売り飛ばしてしまいます。酷い話ですが、シングルマザーで悪い男に引っかかり我が子を虐待する女が現代の日本にもいるのでよくあるケースだったのでしょう。

 おかげでマリンチェは、母語ナワトル語のほかに現地の言葉マヤ語もマスターします。そのころスペイン人の征服者(コンキスタドールエルナン・コルテス(1485年~1547年)は、メキシコ高原に黄金の国アステカ帝国があるという噂を聞きつけマスケット銃武装した数百名の部下(500名~1000名と諸説あり)と共に上陸します。

 途中、抵抗するタバスコ族を撃破したとき、首長は降伏の証として財宝と共にマリンチェら数名の女奴隷を差し出しました。マリンチェはよほど聡明だったのでしょう。スペイン人たちと暮らす中でスペイン語を覚えコルテスの通訳となりアステカ帝国との交渉にも同席します。コルテスとは男女の関係もあったようで息子マルティンを生みました。ただ奴隷女が正妻になることはなくコルテスは貴族の娘と結婚し日陰の身となります。

 アステカ帝国滅亡後、マリンチェが邪魔になったコルテスによって彼の部下と強制的に結婚させられたともいわれ晩年は不幸でした。


 メキシコの人たちはこれをもってマリンチェを民族の裏切り者として死後も糾弾しますが、当時メキシコという国はなくマリンチェの不幸な生い立ちから祖国と呼べるものもなかったように思えます。過酷な運命に翻弄されながら精一杯生きた女性なのでしょう。売国奴呼ばわりは可哀想な気もします。