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死を招く黄金

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 昔、黒沼健(1902年~1985年)という推理・SF作家がいました。東宝映画「大怪獣ラドン」の原作者で予言者ノストラダムスを日本で最初に紹介した人でもあります。彼は秘境・超古代文明・失われた大陸など少年少女が興味を引きそうな数々の著作を残しています。かくいう私も中高生時代熱心に読みふけったものです。

 太陽の処女伝説の記事で、本棚を整理していたら『世界の奇談』というネタ元の本を発見したと書きましたがこの時同時に黒沼氏の『失われた古代大陸』『霊と呪い』などという当時夢中になっていた本も発見しました。いま読み返しても非常に面白かったのでこれからいくつかをブログでも紹介しようと思います。今回は南アフリカの黄金伝説です。



 ズールー人は現在の南アフリカからジンバブエ南部に分布し人口は一千万。かつては黒人王国を形成していましたが西欧列強の侵略を受け最後はイギリスの植民地にされました。話は欧州の白人たちがこの地に来る前。いつの時代の事か分かりません。ズールー王国にチャカという賢明な王がいた時代だとされます。

 ズールー人は未開とはいえ、鉄器を製造する技術はありましたから古代文明中期から晩期くらいの文化はあったと思います。名前は分かりませんが当時一人の鍛冶屋がいました。この男は腕が良いと評判で注文もひっきりなしだったと伝えられます。ある時鍛冶屋は鉱石をさがすために山の奥深くに分け入りました。その際鉄鉱石のほかに見た事のない鉱石をみつけて持ち帰りました。試しに鍛えてみると今まで見た事のないまばゆい光を放つではありませんか。鍛冶屋は珍しい金属を使って腕輪を作ります。その光る腕輪をチャカ王に献上すると、あまりの珍しさに大王の家来たちからも注文が殺到します。その鉱石は山に無数にあったそうですから、鍛冶屋は腕輪や足輪を作り続けこの国一の大富豪になりました。

 もうお分かりだと思いますが、この珍しい金属は金でした。他国とほとんど交易をしなかった当時のズール人たちは金の価値が分からなかったのです。それでも物珍しさから珍重され結局貴金属となったのですから、案外金銀も最初はこうやって貴重になったのでしょうね。

 ところが金の腕輪をしていた人々の間に奇妙な病気が蔓延します。次第に気力が衰え最後は死んでしまうのです。人々は黄金の腕輪の呪いと噂しました。報告を聞いたチャカ王は金の腕輪を身につけることを禁じます。新たに黄金を掘り出すことも禁じ、それまで作られた黄金製品をすべて差し出させ、掘り出された鉱山の洞窟深くに封印しました。逆らった者は黄金製品を身につけたまま洞窟に生き埋めにされたそうです。後にここには大王の墓も築かれます。


 その後数百年が過ぎました。1908年の事です。当時南アフリカはイギリスの植民地でした。イギリス本土からロナルド・ファーガソンという青年が地元の騎馬警察隊に赴任します。当時、軍と同様警察も指揮官は白人でも、それだけでは数が足りないため現地採用の黒人が数多くいたそうです。ロナルドは、寡黙で土人に似つかわしくない知性をたたえた一人の巡査部長に出会います。彼はジュベンと名乗りました。二人は急速に親しくなります。

 ある時、ロナルドは深刻な表情のジュベンから黒い腕輪を見せられます。ところがこれを磨いてみると中から黄金の輝きが現れました。驚いたロナルドが尋ねると、ジュベンは民族の伝説を話し自分はチャカ王の命令で代々封印された洞窟を守る番人の家系だと打ち明けます。休暇を貰った二人は、問題の洞窟に行ってみる事にしました。ところが厳重に封印された洞窟の中には無数の黄金の他に苦悶の表情で死んだであろう白骨死体があたり一面に散らばっていました。気持ち悪くなった二人は、洞窟を出て「この事は二度と口外しない」と約束しました。


 このため、本国からチャカ王の財宝を探しに来た調査団にも秘密の洞窟の場所は教えませんでした。それからさらに数年が経ちます。洞窟の秘密を知る最後の生き証人、ナタール騎馬警察隊巡査部長ジュベンは49歳の生涯を閉じました。秘密を知る唯一の西欧人ロナルドも本国に帰還します。

 イギリスに帰ったロナルドは、ジュベンに形見としてもらった黄金の腕輪を知人のいるオックスフォード大学に持ち込み鑑定を依頼しました。その結果は、金の純度60%。それ以外はニッケルとアンチモニー。ただしごく少量の天然の砒素が混入しているとのこと。

 人々の死の真相は、この砒素の慢性中毒が原因でした。南アフリカは現在でも世界有数の産金国です。国内各地に有望な金山があります。その中には砒素のような有毒物が入っているケースもあったのかもしれません。まさに死を招く黄金と言えるものでした。その後チャカ王の黄金の洞窟を発見した者はいません。歴史の彼方に忘れ去られました。