※ 日本が開発中の次期空対艦ミサイル XASM-3
日本は、老朽化したF-4EJ改 ファントムⅡの後継機種としてロッキードF-35A ライトニングⅡを選定したわけですが個人的には同時に採用してほしいF-35用の何種類かの兵器があります。それは空対地ミサイルのAGM-65マーべリック、AGM-154JSOW、巡航ミサイルのストームシャドウ、そして対レーダーミサイルのAGM-88HARMなどです。
せっかく攻撃機寄りのマルチロール機を採用するのだから、すべての能力を十二分に発揮できなければお金の無駄です。それでなくとも高い買い物なんですから。なんでわざわざこんな事を書くかというと、昔ファントムを採用した時、国内の反日左翼勢力に配慮して空中給油装置や爆撃コンピュータなどをわざわざ外すという愚かな事をしたからです。さすがに今の日本政府はそこまで馬鹿じゃないと信じたいですが、もし何らかの能力制限をわざわざ設けたら国家反逆罪級の罪だと思います。利敵行為にも等しい。
さて今回は対レーダーミサイルの話です。対レーダーミサイルとは、目標となるレーダーサイトから発信されるレーダー波を受信し、その発信源にむけて自らを誘導するパッシブ・レーダー・ホーミングのミサイルです。おそらく一番有名なのはアメリカのAGM-88HARMでしょう。
HARMは湾岸戦争で本格的に使用され(その前にリビア爆撃などで限定的に使用)、戦後米空軍幹部の「HARMが無かったら多国籍空軍の損害は全機数の半分にものぼっただろう」という証言に象徴される通り重要な役割を果たしました。
アメリカを中心とした多国籍空軍は、ソ連に次ぐ濃密なソ連式防空コンプレックス(対空ミサイルと対空機関砲をレーダーと連動させた防空陣地)を有するイラク軍を対レーダーミサイルによって盲目状態にし、戦いを有利に進めます。近代兵器はレーダーという目が無ければその能力をほとんど発揮できません。
イラク軍が、多国籍軍の航空機を撃墜しようとレーダーを照射すると、その発信源に向けてHARMなどの対レーダーミサイルが飛んできて破壊するのです。これを恐れたイラク軍はレーダー照射を止め、主に赤外線ホーミングの地対空ミサイルを発射して対抗しました。
ところが赤外線ホーミングミサイルは対処も容易でフレアを射出したり高機動で交わせるのです。イラク軍はレーダーの破壊を恐れて照射をやめ、結果レーダーサイトは温存されましたが多国籍空軍に制空権を奪われてしまいます。レーダーが無ければ迎撃に戦闘機が上がることも不可能なのです。実際、湾岸戦争でイラク軍戦闘機と多国籍空軍機が戦闘した例は数えるほどしかありません。大半のイラク軍機は地上で破壊されました。
HARMのほかにイギリスのALARMミサイルも湾岸戦争デビューですが、目標を捉えたらマッハ2以上の高速でそこへ向かうHARMよりさらに凶悪な代物です。敵が対レーダーミサイルの存在に気付いてレーダー照射をやめると高度13kmまで上昇してパラシュートを展開、滞空モードに入ってゆっくり降下します。そして敵が再びレーダー照射するのを待ちパラシュートを切り離して2個目のロケットモーターを点火、目標に向かっていき破壊します。
どうです?日本も対レーダーミサイル欲しいでしょ?ところが日本は空対艦ミサイルのXASM-3がパッシブ・レーダー・ホーミング能力を持ち(アクティブ・レーダー・ホーミングと切り替え可能)対レーダーミサイルと似たような使い方ができることからAGM-88HARMの採用を見送ったという説があります。
しかしこれは本末転倒も甚だしい。いくらXASM-3が高性能でもASM-2が1億5千万することから考えると少なくとも1億以上、もしかしたら2億近い価格になるのではないかと推定します。いくら対レーダミサイル的な運用ができるとはいえ、敵のレーダーは無数にあるんですよ。地対空ミサイルのレーダーもあれば空軍基地のレーダーもある。早期警戒用のレーダーもあります。これらを高価なXASM-3で攻撃してたらいくらあっても足りません。あくまでXASM-3は対艦ミサイルとして使用すべき。
米軍でさえ1発3800万円のAGM-88HARMを高価すぎるからとコスト削減を図っているというのに…。XASM-3はそのままとして、別により安価な対レーダーミサイルを導入すべきだと思います。といってもライセンス生産すれば7~8千万にはなりそうですが。