イギリス陸軍戦後第3世代の主力戦車。シルエットが以前のチーフテンとあまり変わらないのはイギリスの保守性の表れかもしれません。主砲も滑腔砲主体の世界の潮流にさからって55口径120㎜ライフル砲L11A5を採用していますし。
ただ全体的に角ばって見えるのはチョバムアーマーという新型複合装甲を採用しているためです。チョバムアーマーはイギリス戦車研究所のあるチョバム・コモンの地名に由来しています。実は軍事機密で実態は謎に包まれているんですが、装甲板の間にセラミックタイルを挟んだ構造といわれ、その他に炭化ホウ素、炭化シリコン、酸化アルミ(サファイアかアルミナ)窒化アルミ、ほう化チタンやシンタチック・ダイヤモンドが使用されているともいわれています(ウィキペディアより)。
チーフテンの後継戦車開発を1970年代から始めたイギリスでしたが、同じころイラン向けのシール戦車の開発も進めておりこちらがイラン革命でぽしゃったため、それと統合して(というか流用して)チャレンジャーを完成させました。1983年生産型第一号が登場しています。技術的冒険をせず手堅くまとめたイギリスらしい戦車と言えるでしょう。
1990年までに420両生産され、その後は改良型であるチャレンジャー2の生産に移行、現在こちらが主力戦車となっています。
ところでチャレンジャー1ですが、CAT(Canadian Army Trophy)射撃競技会などでライバルのM1エイブラムスやレオパルド2などに大差をつけられ評判はあまりにも芳しいものではありませんでした。「やはりライフル砲では駄目なのだ」という声も多かったそうです。
が、湾岸戦争に参加したチャレンジャーはそんな悪評を吹っ飛ばしてしまいます。防御力はM1エイブラムスと同じように高く、イラク軍の主力戦車T‐72も余程の至近距離(しかも側面か背後)からでないと撃破は困難だったそうです。一方チャレンジャーは5000mの遠距離からイラク軍のT‐55戦車を撃破した記録もあり戦争を通じて200両以上もイラク軍戦車を破壊しました。
一応東側の当時花形戦車だったソ連製T‐72と比較すると、T‐72は自動装填装置はあるものの次弾発射まで12秒かかります。一々装填するために水平に戻す必要があり照準がはずれ再照準しなければいけないのです。チャレンジャー1は分離弾薬方式とはいえそれよりは早かった(私の推測では6~8秒に一発)でしょうから有利に戦えたでしょう。照準もつけたまま次弾発射できたでしょうから。おそらくT‐72の有効射程距離1500mより遠くから一方的にアウトレンジで破壊できたと思います。
ちなみにルクレールや90式など西側戦車の自動装填装置は毎分15発ですから4秒に一発!凄いですね。
M1エイブラムスも熟練兵なら4秒に一発くらいは軽かったそうですからマッチョアメリカ恐るべし!イギリス戦車兵もジョンブル魂で頑張ってますよ!!!
ウィキで拾った余談をひとつ。チャレンジャー2に交替して全車退役したチャレンジャー1ですが318両ほどヨルダン軍に引き渡されアル・フセインという名で主力戦車になっています。なんでもヨルダン国王アブドラ2世がイギリス士官学校留学中にチャレンジャー1の操縦や運用法を学んだ縁だとか…。
【性能諸元】
全長:11.5m
全幅:3.51m
重量:62t
速度:56km/h
行動距離:450km
武装:120㎜ライフル砲
7.62㎜機銃×2
装甲:チョバムアーマー
エンジン出力:1200hp
乗員:4名