鳳山雑記帳はてなブログ

立花鳳山と申します。ヤフーブログが終了しましたので、こちらで開設しました。宜しくお願いします。

90式戦車

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 戦後第3世代戦車の特徴120㎜滑腔砲(スムーズボア・ガン)を搭載している90式戦車は、日本がやっと世界の水準に追いついた戦車と言えます。滑腔砲とは砲身内部にライフリングが施されていない砲で、砲弾には安定翼(フィン)が付いています。ライフル砲に比べ遠距離での命中精度に難があるものの、製造が容易で砲身寿命も長く軽量、なによりも砲弾の初速を速くでき(=威力が高い)、HEAT(成形炸薬弾)との相性が良い事もあって一気に世界の主流となりました。
 
 最初に登場したのはロシア(当時はソ連)製T-62の115㎜滑腔砲からですが、ドイツのラインメタル社が120㎜44口径滑腔砲を開発しレオパルド2に搭載した事から一気に西側諸国に普及し第3世代戦車の標準戦車砲となります。日本もこれをライセンス生産し新戦車に搭載することを決定しました。
 
 実は日本人の平均体格では120㎜砲弾(20kg以上ある)を手動で装填するのは体力的に難しく、74式に代わる新戦車は自動装填装置を搭載することが前提となりました。自動装填装置はロシアのT-62T-72が世界に先駆けて搭載していましたが、彼らの場合軍事ドクトリンから車高の低いコンパクトな戦車というコンセプトで必然的に居住性が悪くなり体格の小さい者を選んで戦車兵にしていたことから装填の自動化を考えたので事情は日本と似ていました。
 
 防御力に関しても、セラミック系複合装甲が採用され劣化ウランなどの重金属装甲よりは軽く作る事ができ、車体を50tちょっととコンパクトにまとめる事が出来ました。他国の戦車(レオパルド2、チャレンジャー、M1A1エイブラムス)はみな60t以上あります。
 
 その防御力はゼロ距離射撃で120㎜滑腔砲弾に耐えるほどで、一説にはM1A1エイブラムスを若干上回る程度だと言われています。ただしエイブラムスはAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)の高性能化を踏まえ何度かの改修があり重装甲化していますから現在まったく改修していない90式よりは当然防御力はあります。初期のAPFSDSであるJM33装弾筒付翼安定徹甲弾NATOのDM33のライセンス生産)のゼロ距離射撃に耐える程度で現在のDM53(タングステン合金弾芯)やM829A2(劣化ウラン弾芯)に対してはどうか分かりません。均質圧延鋼装甲(RHA)換算、撃角0度、距離2000m条件で200㎜近く伸びていますからね。ちなみに同条件でJM33は460㎜、DM53は650㎜、劣化ウランのM829に至っては700㎜の装甲貫徹力を誇ります。当然レオパルド2A5以降やM1A1HA以降のエイブラムスはこれらの砲弾のゼロ距離射撃に耐えられるはずです。
 
 防御力の目安としてエイブラムスなら
    M1A1<90式<M1A1HA、M1A2以降
 レオパルド2でいうなら
    レオパルド2A4<90式<レオパルド2A5(楔装甲追加)以降
となるでしょう。
 
 ただ90式の防御力はあくまで正面だけで、全体を50tに纏めたという事は側面と背面、上面にしわ寄せが行っている可能性はあります。すべての方向に大きな防御力を発揮するにはメルカバMk4のようなカネゴン砲塔(失礼!)にしなければなりませんからね(苦笑)。
 
 
 油気圧式サスペションも74式ほどではありませんがある程度は継承しているそうです。90式の売りは命中精度で射撃統制装置は日本の得意なコンピュータ統御、レーザー測距機、熱線映像装置、各種センサーなどを組み合わせどのような気象条件や暗闇でも高い命中率を誇ります。アメリカのヤキマ演習場で行進間射撃(走りながら撃つ事)を行ったところ3km先の的に命中させてアメリカ軍関係者を驚かせたそうです。ソースが思いだせないので自信ないですが確か行進間射撃で80%以上の命中率があったように思います。
 
 1977年開発開始、1990年8月制式化。総生産数341両。日本戦車として世界の水準に追いつきある部分では一歩リードした画期的存在、それが90式戦車だったと言えるでしょう。
 
 
【性能諸元】
 
全長:9.80m
全幅:3.40m
全高:2.30m
重量:50.2t
速度:70km/h
行動距離:350km
主砲:120㎜44口径滑腔砲
武装:7.62mm機関銃(同軸)
     12.7mm重機関銃(砲塔上面)
装甲:複合装甲
エンジン出力:1500ps/2400rpm
乗員:3名