そのため、T‐64をベースとしてコストパフォーマンスに優れた安価な戦車の開発がすすめられました。こうして開発されたのがT‐72です。一般にT‐72はT‐62の後継機だといわれていますが、T‐62はT‐55の発展型ですから微妙に違います(笑)。
しかしこれは同情すべき面もあるようです。ソ連戦車はもともと欧州戦線で西側戦車に対抗するために開発されたため起伏の多い森林、平原地帯での戦闘を想定し接近戦を重視して作られました。ソ連の戦術ドクトリンでは待ち伏せする西側戦車を数で圧倒し、2~3両犠牲になってもその時間にダッシュして接近、突破するという戦術に最適な戦車でした。
一方西側戦車は、数の劣勢をカバーするため敵戦車を遠距離で撃破することを最重要任務として開発されましたから、命中精度が高く見通しの良い砂漠戦では圧倒的力を発揮します。
湾岸戦争は(中東戦争もそうですが)、西側戦車に最も良い条件ソ連戦車に最も不利な条件で戦われたのです。ですからソ連軍ファンの中にはソ連本国部隊の戦車師団が欧州の戦場でに西側と対決したら絶対に負けないと主張しています。
が、冷静に観察するとそうも楽観視できないのです。湾岸戦争の戦場写真で砲塔を吹き飛ばされたT‐72の残骸を見たことがあると思います。実はT‐72は防御面で致命的な欠陥があったのです。
T‐72の乗員は3名。そのため砲は自動装填装置が採用され、迅速に砲弾を供給する必要から砲塔下部に収納する構造でした。敵戦車の砲弾が砲塔下部に直撃するとこれが誘爆して大きな被害がでました。
この構造はT‐64、T‐80、T‐90にも共通するそうですからソ連戦車の大きな欠陥とも言えます。
また防御力も西側戦車と違いすぎました。昔ながらの避弾経始に頼るT-72と複合装甲の西側戦車の差は大きく開きます。直撃弾を当ててもびくともしない米軍M-1エイブラムス戦車。一方大遠距離からでも直撃弾で紙のように装甲を破られるT‐72。これはたとえ本国モデルでもそうは変わらないと思います。
T‐72は1982年のイスラエル軍レバノン侵攻でメルカバMk1(105㎜砲装備)に完敗し、1990年の湾岸戦争の大敗でブランドイメージが地に堕ちました。T-72を全面改修したT‐90はブランドイメージ回復が目的で開発されといわれますが、果たしてどこまで回復したやら?(苦笑)
ここまで散々ボロクソに書いてきましたが、これは愛情の裏返しなんです。私はこういう戦車は味があって大好きです。あまりフォローになってないか?(爆)
【性能諸元】
全長:9.53m
全幅:3.59m
重量:41.5t
速度:60km/h(整地)
45km/h(不整地)
行動半径:450km
武装:125mm滑腔砲
12.7mm機銃
7.62mm機銃
装甲:車体前面 280mm
砲塔全面 292mm
エンジン出力:780hp
乗員:3名