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ようやくATACMS供与決定か?

ウクライナ情勢】米、ウクライナに長距離ミサイル「ATACMS」供与へ 


 戦況が不利になったロシアが核兵器を使う可能性があるとアメリカはウクライナへのATACMS供与を渋ってきました。私は日本の国防に直結すると思いウクライナ戦争にはずっと注目してきましたが、大多数の日本人は喉元過ぎれば熱さを忘れるでウクライナ戦争に無関心になった人も多いと思います。なので今回のATACMS供与がどんな意味を持つかも理解できないでしょう。

 ATACMS(エイタクムスと読む)について知らない方のために簡単に説明すると、HIMRAS(M142高機動ロケットシステム)やMLRS(M270自走多連装ロケット砲)から発射できる射程300㎞、弾頭重量560㎏の長距離ミサイルです。通常HIMARSは6個のコンテナ(MLRSは12個のコンテナ)からロケット弾を発射しますが、ATACMSのキャニスターは外見上6個入りのコンテナとそっくりの形状ながら1発だけ入っています。

 HIMARSから発射するロケット弾も精密誘導ですが射程が70㎞と短く、300㎞の射程を誇るATACMSはゲームチェンジャーになる可能性があります。GPS+慣性誘導でCEP(半数必中界 平均誤差半径ともいう。目標に撃ち込んだとき半数がその半径内に着弾する確率)が9mと高精度ですから、ロシア軍の後方にある兵站拠点や司令部などの重要目標を狙う事ができます。

 できればウクライナ軍の反転攻勢が始まった6月の段階で供与すべきだったと思いますが、まあ遅ればせながらでもATCMS供与をアメリカが決断したのは良しとしましょう。F-16の供与も散々渋ったうえようやく決まったくらいですから、アメリカはロシアが核兵器を使用することを相当恐れていたんでしょうね。

 あくまで個人的考えですが、プーチン核兵器を使えないと思いますよ。もし使用したら西側との全面核戦争に発展する可能性があり、ロシアが文字通り壊滅するからです。そして地球上の人類も滅亡します。もちろんロシア本土に攻め込まれてモスクワ陥落寸前に追い込まれたら自暴自棄になって核を使うかもしれませんが。

 地上波では全く報じませんが、BS放送のBSフジプライムニュースなどではウクライナ戦争について頻繁に報じていますね。出演するコメンテーターにも岩田清文氏、磯部晃一氏、渡部悦和氏ら元陸上自衛隊方面総監クラスの陸将が登場し専門的な解説をしてくれるので大変参考になっています。特に元東部方面総監の渡部悦和氏は似非専門家がいい加減な解説をする中、戦況予測がことごとく当たり私が一番信頼している専門家です。例えば開戦初期、キーウ近郊でロシア軍の車列が延々何十キロにもわたって続いているのを見て素人専門家はこぞって総攻撃の準備では?と発言していましたが、渡部さんは補給に苦しんでいるだけなので早晩ロシア軍の攻勢は破綻すると解説しておられました。実際戦況はその通りに推移しました。

 バフムート攻防戦でも、ウクライナ軍は無理に守る必要はなく後方に準備していた陣地帯に撤退して抵抗する方が良い(実は私もそう思っていました)と発言する自称専門家が多い中、渡部さんはただ一人「バフムート攻防戦はロシア軍主力を誘引して大打撃を与えるのが主目的だから頑としてバフムートを守るべし」と発言されていました。ウクライナ軍の作戦意図もその通りだったようで、実際バフムート攻略にロシア軍、とくに傭兵部隊ワグネルは壊滅的打撃を受けました。プリゴジン反乱の原因の一つはバフムートでの大損害だったとも言われるくらいです。

 これら一連の戦況分析で私はさすが東大卒だと思いましたよ。これまでルーピー鳩山など東大に悪いイメージしか持っていませんでしたが、渡部さんを見て東大にもまともな人はいるんだなと改めて感心した次第です。渡部さんの手法はOSINT(オープンソースインテリジェンス)で一般公開されている情報を総合して分析しているそうで、これは大戦中マッカーサー参謀と異名をとった堀栄三陸軍中佐の手法と同じです。

 その渡部さんですが、遅々として進まないウクライナ軍の反転攻勢を見て素人専門家たちが失敗したのではないか?と発言する中、攻勢は着実に進んでいると言っていました。この記事を書いている段階で、ウクライナ軍はザポリージャ州のロシア軍第1防衛線を突破し第2防衛線の一部にも穴をあけつつあると報じられています。未確認情報では第3防衛線に達した部隊もいるのでは?と言われるくらいです。

 渡部さん始め元陸自高級幹部は皆、第3防衛線を突破出来たら陣地戦から機動戦に移り戦況は大きく動くと論じられています。私も素人ながら数多くの戦記を読んだ経験から納得できます。ロシア軍がすべての戦場で同じ密度の防衛線を築くことは物理的に不可能だからです。渡部さんは旧ソ連からロシアに受け継がれた軍事ドクトリンからいうと、第1線陣地にほとんどの戦力を集中し第2線、第3線と後方になるにつれ戦力は薄くなるはずだと予測しておられます。今ウクライナ軍を苦しめている地雷原の密度も後方になるほど粗くなるそうです。西側の軍事研究機関でもだいたい兵力配分で6対2対2の割合だと言われますね。

 ここにようやく待望のATACMSが入ってくるとなると、背後の兵站拠点や司令部を叩くことができるのでロシア軍の士気が崩壊し潰走する可能性もあるとのこと。反転攻勢が遅れているのもウクライナ軍が航空優勢を取れないのが原因なので、むしろよく頑張っている方だという渡部さんの意見は正しかったんでしょうね。その意味ではF-16やATACMSの供与はあまりにも遅すぎたという事かもしれません。

 今回の反転攻勢はウクライナ戦争の天王山になる可能性が高いです。ドンバス地方からヘルソン、クリミア半島に伸びるロシア軍の兵站線をウクライナ軍が遮断できるかどうかにかかっています。もし成功できたらクリミア半島のロシア軍は孤立し立ち枯れするでしょう。それが分かっているからロシア軍も必死で守っています。ATACMSがウクライナ軍の反転攻勢に役立ってくれることを祈るばかりです。

 皆さんはアメリカがウクライナにATACMS供与決定というニュース、どのような感想を持たれましたか?