火砲が発達し歩兵の主力武器が小銃になると、それまでの重い甲冑では身動きが取れなくなり良い的になる事から、しばらく歩兵に防具がない時代が続きました。至近距離で撃たれれば甲冑でさえライフル弾に撃ち抜かれるからです。
しかしさらに火砲が発達してくると、大砲の榴散弾、榴弾などが直撃しなくともその破片で頭をやられ戦闘不能になるケースが多発します。そこでせめて弾片防御しようと各国は兵士にヘルメットをかぶせるようになりました。
ヘルメットの素材は、最初は普通の鉄でしたが技術発展しニッケルクロム鋼、高マンガン鋼などの合金になっていきます。そして現代の兵士はケブラーヘルメットなど合成樹脂素材を用いたヘルメットを使用していきました。ケブラーとは芳香族ポリアミド系樹脂の登録商標で、1965年アメリカのデュポン社で開発され1970年代から世界に広く普及します。
ケブラーは、『パラフェニレンジアミンとテレフタル酸クロリドの重合によって得られ、分子構造が剛直で直鎖状の骨格を持つために、高強度・高耐熱性であり、同じ重さの鋼鉄と比べて5倍の強度を持つ』(ウィキペディアより)ものです。ただし合成樹脂であるため強度なアルカリ性条件下あるいは塩素や紫外線にさらされると分解するという欠点もあります。
ではこのケブラーヘルメットの強度はどうかというと、さすがに至近距離からアサルトライフルで撃たれると貫通するそうです。ライフル弾はそれだけ威力が高いのです。ですが、従来のものと比べるとかなり防御力もアップし何よりも軽くなった事が兵士にとってはありがたいものでした。
ケブラーヘルメットが現代の兜なら、現代の鎧にあたるのがボディアーマーです。素材はケブラーやアラミド繊維で、中に金属板やセラミックプレートを織り込んだ物。映画やニュース映像などでご覧になった方も多いと思いますが、防弾チョッキ、防弾ベストなどの名で日本でもなじみ深いですよね。
こちらは防弾レベルがⅠからⅣ(アメリカ基準)まであり、一番弱いレベルⅠは5mの距離で38口径の拳銃弾を防ぐ程度、これがレベルⅣになると15mの距離で30-06スプリングフィールド弾(7.62×63㎜)を防ぐ事が出来ます。世界の大半の歩兵用アサルトライフルはこれより威力の低い5.56㎜NATO弾ですからレベルⅣボディアーマーなら生存率が飛躍的に向上します。
だったら兵士は全員レベルⅣのボディアーマーを着ければいいじゃないか!と思われる方も多いと思います。しかしさすがにこのレベルになると重さが20kgを超えてまともに動けなくなるのです。防御戦には使えても侵攻戦には使えません。現代の軍隊はその中間をとって防御力と機動性のバランスを取っています。どちらを重視するかは各国歩兵ドクトリンで違ってきますが…。
しかし、技術発達は日進月歩なのでそのうち軽いボディアーマーで7.62㎜弾を防げるものが登場してくるかもしれません。そして攻撃側は5.56㎜弾のさらなる威力強化を図る。これはもういたちごっこですね(苦笑)。
人類はこのようにして文明を発展させていったのかもしれません。