鳳山雑記帳はてなブログ

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第2次大戦ドイツ空軍対地攻撃の実情

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 第2次大戦初頭、電撃戦の一方の主役空の砲兵として活躍したユンカースJu87スツーカ。初期型の250㎏爆弾から後期型で500㎏爆弾、1.4トン爆弾と搭載量を増やし続けついには対戦車攻撃の切り札として37㎜機関砲あるいは30㎜機関砲2門を搭載したG型まで登場しました。

 急降下爆撃機は大規模な地上戦闘がない戦場では意味がないので、中期以降は主に東部戦線に投入されます。ところが最高速度が300㎞/h台と低速なため開戦奇襲の壊滅的な状況から回復したソ連空軍の格好の餌食となり始めました。

 そこでドイツ空軍は、対地攻撃専用の機体に装甲を施したヘンシェルHs129と対地攻撃の後高速で離脱し敵戦闘機との空戦もこなすFw190G型/F型という戦闘攻撃機を導入します。ところが旧式化したはずのJu87は完全に退役せずドイツが降伏した最後まで使い続けられます。この理由が私には謎だったんですが、最近『東部戦線の独空軍』(R・ムラー著 朝日ソノラマ文庫)を読んで氷解しました。

 まずヘンシェルHs129に関しては、確かに機体は装甲に覆われていますがエンジン供給の都合から高馬力エンジンを選択できずわずか700馬力の貧弱なエンジンを採用、しかもそのエンジン部分には装甲がなかったため地上からの対空砲火に脆弱だという致命的な欠陥がありました。ガーランドなど実際に航空部隊を運用する空軍幹部などは明らかに失敗作だという烙印を押していたそうです。彼らは敵であるソ連空軍のイリューシンIl2シュトルモビク地上襲撃機の方を高く評価します。というのもシュトルモビクは単発ながらエンジン部分にも重厚な装甲を施し23㎜機関砲×2、7.62㎜機関銃×2、12.7㎜旋回機銃×1の他爆弾600㎏搭載でき戦車キラーとして東部戦線で猛威を振るいました。

 次にフォッケウルフFw190G型とF型。こちらは元が戦闘機。しかも余剰馬力の大きさから最大1トンの爆弾搭載量を誇ります。加えて最高速度は625km/h(G-3型)と戦闘機並み。爆弾投下後は高速離脱できるし最悪の場合は対戦闘機戦闘を普通にこなすという万能機でした。良い事ずくしの戦闘攻撃機で大戦後半の対地戦闘はこれ一機種に絞るべきだという意見もあったそうです。実際両型あわせて6600機以上生産されています。

 しかし『東部戦線の独空軍』を読んで謎が分かりました。Fw190G/FはBMW801エンジンが100オクタンのC3燃料しか使用できないため大量導入できないのです。貴重なC3燃料は戦闘機のMe109G型/K型、Fw190A型/D型にまわさないといけなかったので余裕がありませんでした。(粗悪燃料でも飛べないことはないが大きくパフォーマンスを落としFw190G型/F型の優位性が失われる。)一方Ju87は87オクタンのB4燃料で済むためこれがJu87が最後まで使われた理由です。

 要するに燃料の関係からFw190G型/F型は優秀性は分かっていても大量に使いたくてもできなかったのです。これが世界一のチート国家で莫大な石油を持つアメリカとの大きな違いでした。Fw190G型/F型はアメリカ陸軍航空隊で言えばリパブリックP-47サンダーボルトに近い機体だと思うんですが、こちらは対戦闘機戦闘でも対地攻撃でも大活躍しましたからね。結局すべての事情を把握しないとIFは語れないという事なのでしょう。非常に勉強になりました。