最近、第2次大戦の飛行機そのなかでもエンジンに興味が深まっている鳳山でございます(汗)。
BMW801といえばフォッケウルフFw190戦闘機に搭載された空冷星型複列14気筒のエンジンとして有名ですが調べてみるとJu88爆撃機にも搭載されたようですね。
一般にJu88の搭載エンジンは液冷のJumo211ですが、戦闘爆撃機タイプのC型の一部にBMW801が搭載されたみたいです。
C型は夜間戦闘機として使用されたので、わざわざ高空性能の劣る空冷に換装した意味が不明だったんですがC‐7は襲撃機として使用されたそうなので中低空で性能のよいBMW801を選んだのでしょう。納得です。あとC-5も801ですね。
ちなみにJu88はC‐1~C‐6までが夜間戦闘機で、C‐7だけが襲撃機となっています。
だいぶ横道にそれたので、エンジンの話に戻すと第2次大戦まで欧州では空力的に不利な空冷エンジンは嫌われ液冷エンジン全盛でした。空冷エンジンもあるにはありましたが大型の爆撃機用とされました。戦闘機と違い爆撃機なら少々の空気抵抗など関係ないからです。
1938年、ドイツ空軍は主力戦闘機だったメッサーシュミットBf109の搭載エンジンであったダイムラーベンツDB601が高性能ではあっても、その分生産性に難があり(ライセンス生産した日本でも苦労しましたね♪)供給数に不安があったため、フォッケウルフ社にBf109を補完する戦闘機の開発を命じました。
フォッケウルフ社ではクルト・タンク技師を中心に開発がすすめられましたが、新型戦闘機の心臓ともいうべき搭載エンジンの選定に悩みます。
タンクは、Bf109と同じ液冷エンジンではおそらく同じような理由(生産性、整備性)で供給が困難になる可能性が高いと考え、思い切って当時戦闘機では見向きもされなかった空冷エンジンのBMW139(離昇出力1500hp)を採用します。
直径が大きくなる分、機体を空力的に洗練させて補おうと考えたのです。ところが試作してみると空冷エンジン搭載機に慣れないためか冷却装置に苦労します。そこでプロペラスピナーの後方に冷却ファンを設置して送風しシリンダーを冷却する仕組みを採用しました。
しかしなかなか思うように冷却できず、機体開発と同時にエンジンも再設計することになったのです。
こうして完成したのがBMW801でした。801は139とほぼ同じサイズながら18気筒から14気筒に改められています。その分シリンダーを大きく出来、冷却効果が上がったのです。そのほか燃料噴射装置、プロペラピッチ・燃料の流量・燃料空気の混合点火のタイミングなどをスロットルレバーの操作ひとつで制御できる制御機構などそれまでのエンジンに無かった優れたシステムを持っていました。
BMW801エンジンを搭載したFw190は、Bf109の補完どころかそれをはるかに凌駕する高性能戦闘機として誕生しました。
クルト・タンクは「速いだけが取り柄でひ弱なサラブレッド(Bf109)ではなく、私は過酷な戦場での使用に耐えうる軍馬を設計したのだ」と豪語したそうですが、実際1941年実戦デビューすると、Bf109があれほど苦労したイギリスのスーパーマリンスピットファイアMk5を圧倒します。一時ドーバー海峡の制空権を奪い返すほどでした。
しかし、空冷エンジンであったBMW801は高度6000mを超えるとガクンと出力が落ちるという欠点がありました。そこでタンク技師は液冷のJumo213エンジンに換装したFw190D型を開発します。D型はのちにTa152に発展し、この機体はレシプロ戦闘機の限界ともいえる高性能機となりました。
一方、BMW側も空冷エンジン801の改修を重ね排気タービンを搭載したBMW801Jは離昇出力こそ1700hpと変わりませんが高度12000mで1500hpもの大馬力を発揮する高性能エンジンに生まれ変わります。さらに801Qは高度12000mで1700hpまでパワーアップしました。
これは空冷エンジンでは究極ともいえる高性能でした。しかし残念なことに生産コストがあまりにも高すぎたため量産されませんでした。
BMW801Qエンジンを搭載したFw190を見たかった気がしますが、Ta152という高性能液冷エンジン戦闘機がすでに登場していた事と、時代はMe262のようなジェット戦闘機の時代に突入していたため実現しませんでした。
フォッケウルフ戦闘機ファンとしては残念な気がしますね(笑)。