

ところが日本では、ロジスティクスや軍用トラックに興味を持つ人がいないのか資料がほとんど見つかりません。一応「軍用自動車入門」(高橋昇著 光人社NF文庫)で調べてみましたが、あまりよく分かりませんでした。ほとんど諦めかけていたところ、同じ光人社NF文庫の「機甲入門」(佐山二郎著)の巻末に軍用車両の一覧表が載っているではありませんか!
さすが佐山さん、火砲関係だけでなく車両方面にも一家言の持ち主だったとは!いやあおみそれいたしました。佐山さんの本をベースにネットなどで調べて一覧にしたのが上の表です。これでも民間呼称や最高出力などは分かりませんでした。トラックは民間用と軍用が同じなので特に分かりにくいのです。いすゞの他に豊田や日産も作っているため余計混乱します。同じ時期に採用された似たような性能のトラックを一括して一式とか二式とか名付けているのも混乱に拍車をかけているのです。
九四式六輪自動貨車というのは、陸軍が採用した初期の実用輸送トラックです。ベースになったのは民間用のいすゞTU10型。初期の傑作トラックで、輸送の他に軽量の火砲の牽引にも使われます。ところがわずか1.5トンという積載量不足で一気に旧式化し、後継の輸送トラックが開発されていきました。特徴的なのは、石油の不足を鑑みガソリンエンジンからディーゼルエンジンに主流が移った事。これは日本の国情にあった変化でした。
これらのトラックがどれくらい生産されたかは調べても分かりませんでしたが、自動車生産は1941年の数字で46100台。そのうち9割が商用車だそうですからこれをトラックと仮定すると毎年41000台前後が生産された事になります。日本にしてはなかなか頑張っていると思いますが、同年のアメリカの総自動車生産量は484万台。桁違いです。
軍用トラックとしてだいたい年間2万5千台程が納入され、これを陸海軍が取り合ったそうですが末期には生産数自体が空襲などで落ち込み日本の兵站能力は大きく削がれました。これは海上の輸送船のケースと同様ですね。いくらディーゼル主体とはいえ、燃料は軽油。ガソリンとバッティングしないから航空燃料(ガソリン)の需要を圧迫しないとはいえ、ガソリンも軽油も同じ原油から精製しなければいけません。大戦末期にはタンカーの不足と執拗な米軍の通商破壊戦で原油そのものの供給が断たれたわけですからトラックも動かなくなったと思います。