鳳山雑記帳はてなブログ

立花鳳山と申します。ヤフーブログが終了しましたので、こちらで開設しました。宜しくお願いします。

書評 『アンデスの黄金 クントゥル・ワシ神殿発掘記』(大貫良夫著 中公新書)

イメージ 1
 
イメージ 2
 
イメージ 3
 
イメージ 4
 
イメージ 5
 
 
 最近読んで感銘を受けた本です。本書は文化人類学者で東大名誉教授の大貫良夫氏が南米ペルー、紀元前に栄えたプレインカ期の神殿遺跡クントゥル・ワシの発掘を紹介した本です。
 
 
 プレインカ期に関してはほとんど知識がなかったのでたいへん面白く読めました。ただ私はミイラとか人骨が苦手なので夜中に本書の写真見てしまうと怖くて寝れなくなったのは秘密です(爆)。
 
 
 それにしても発掘ってこんなにたいへんだったんですね。学術的な問題だけでなく現地住民との交流、中央政府や地方政府の理解、協力を得ないと絶対に不可能だと分かりました。学者って知識だけではなくこういう人たちを動かす政治力が絶対に必要なんですね。
 
 
 
 
 という事で遺跡の説明。場所はペルー北部、標高2750mにあるインカ最後の皇帝アタワルパがフランシスコ・ピサロに幽閉され最期を迎えた地としても有名なカハマルカから西へ30キロくらいの山中。サンパブロという小さな町の郊外にあります。
 
 クントゥルワシ神殿は、紀元前1000年~紀元前800年頃のイドロ期から始まり、最盛期は紀元前800年から紀元前500年にかけてのクントゥル・ワシ期だったそうです。ただこの時代区分は広範囲なものではなく遺跡事に区分が分かれているそうなのでややこしい。ちなみに一時期日本でも話題になったペルー北部沿岸で栄えたシカン文化期が紀元前1350年~紀元前750年頃だから、イドロ期とほぼ重なりますね。
 
 
 クントゥル・ワシ遺跡もシカン同様黄金製品が数多く見つかっています。遺跡内部にある高位の神官の墓から見つかったものですが、人々は墓=神殿と考えていたようです。当時の金加工技術には驚かされます。
 
 ところでインカにしても中米のアステカにしても金属は青銅器までしか知らず高度な鉄器加工技術を持たない文明だったとされます。やはり鉄器製造の先進地帯であるオリエントとは陸続きでなかった事が影響したのでしょう。なかなか独自に浸炭法を開発する事は難しいですからね。もちろん鉄鉱石は世界中に広く分布しているので軟鉄は知っていたでしょうが、これだと青銅のほうが強靭ですから。
 
 
 しかしこれだけ黄金製品が出土するんですから、まさに黄金の国といって良いかもしれません。スペイン人たちがエルドラド伝説を追い求めるはずですよ。