ヒマラヤに端を発しアラビア海にそそぐ大河、インダス。この地域に人々が住み始めたのはおよそ紀元前6000年前だといわれています。
穀物の栽培と家畜の飼育をはじめ、紀元前4000年頃には銅を使用しろくろで土器を製作していたそうです。やがてハラッパーやモヘンジョダロに代表されるインダス文明が誕生し紀元前2600年頃から紀元前1800年頃最盛期を迎えます。
そして紀元前13世紀、アーリア人の侵入によって滅びたといわれています。
インダス文明は、土地の生産力の低さから強力な王権は誕生しなかったとされます。一方、高度な都市文化が発展し上下水道を完備する優れた文明でした。インダス文明の担い手はドラヴィダ系の人々であったと推定されますが、各地との交易で栄えていたそうです。
調べて行くとインダス文明は致命的な弱点を持っていた事が分かります。というのもこの土地では錫を産出せずアフガニスタンの山中にそれを求めなければならなかったのです。これが交易文明としてのインダスを形作ったのかもしれません。
何故錫という金属が重要かというと青銅の材料だからです。青銅は銅と錫の合金です。鉄器が普及する前、加工しやすく丈夫な青銅は古代文明発展の絶対条件でした。
インダス文明は、錫が貴重であったため他の地域の青銅器より錫の含有量が少なくもろいものしか作れなかったそうです。
現在インダス流域は乾燥し砂漠化が進んでいますが、インダス文明が栄えていた頃は現在よりもっと湿潤で生活しやすい環境だったと推定されます。そして同じころ、現在インドでもっとも人口が密集しているガンジス河流域は未開のジャングルだったそうです。
乾燥化により衰亡してきた文明に止めを刺したのがアーリア人の侵入だったのでしょう。
古代文明の盛衰と気候変動は密接な関係があると思います。後年ガンジス下流域に興り北インドを統一するようになるマガダ国は、鉄や銅さらには石炭まで産出し豊富な金属資源で強大化したそうですから、資源の面も文明を考える上で無視できません。鉄器製造に重要である石炭があれば、木炭による製鉄より効率よく生産できるのでしょう。
インダス文明は、まさに資源問題と気候変動で滅んだと言えます。