鳳山雑記帳はてなブログ

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書評 「歴史群像アーカイブ 太平洋島嶼戦」

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 戦史マガジンとして有名な学研「歴史群像」から大東亜戦争における太平洋島嶼戦(サイパン硫黄島、ペリリュー、ラバウルガダルカナル、タラワ)に関する記事をまとめた本です。
 
 定期購読してるので当然読んでいるはずですが、忘れていた部分も多くたいへん勉強になりました。
 
 
 戦史に特化しているだけあって光人社NF文庫(←知ってる人は知っている)並みの内容の濃さです。
 
 
 一般的に日本軍は、補給も考えず太平洋の島々に兵力をばらまき米軍に各個撃破され物量の暴力の前に抵抗むなしく玉砕した、というイメージが強いと思います。しかし個々の戦闘を詳細に調べてみるとかなり激しく抵抗している事が窺われます。
 
 例を上げれば、戦史をちょっとかじったくらいの人はタラワの戦闘をあっさりと玉砕したと思いがちですが、わずか1個連隊強の海軍特別陸戦隊が自軍に匹敵する損害を敵に与えていたことは衝撃でした。
 
 
 ペリリュー、硫黄島など米軍を苦しめた戦闘は指揮官の能力の高さ(栗林中将、中川大佐)ももちろんありましたが、事前準備として入念な陣地構築、可能な限り集積した弾薬、物資が善戦に大きく貢献した事が分かりましす。(それも指揮官の能力でしょうが…)
 
 一方、サイパン、沖縄は弾薬、物資の不足によって最後はバンザイ突撃せざるを得なくなったという悲劇がありました。弾がないんですから斬り込み以外抵抗の手段がなくなるのです。
 
 また、水際防御と縦深防御で揺れた大本営の方針に翻弄され現地部隊が苦労するところは現代にも通じているようで怒りを覚えます。本書では入念な陣地構築をして要塞化していれば、水際防御が当然で敵に橋頭保を築かれてしまえば終わり、後は敗北までの時間の長さにすぎないと厳しく断じています。
 
 彼我の戦力の差を考えればいずれ絶対国防圏に敵が迫るのは明らかで、早くから要塞化すべきだったしそれをしなかった大本営の怠慢が出なくてもよい損害を出したことは絶対に許される事ではありますまい。
 
 
 米軍は、日本に関するあらゆる情報を集めガダルカナルの時点で早急に個々の戦闘に勝利しなくとも日本の生産力・補給力からいずれ日本軍は崩壊すると読んでいたそうですから、こうなると勝敗は戦う前から決していますね。悲しい事ですが…。
 
 
 過去の日本指導部の過ち、前線で戦った兵士の頑張り、有能な指揮官、無能な指揮官、現代日本を考える上でも多くの示唆を与えてくれる良書です。戦史に興味のない方でも日本の将来を考えていく上で一読されたらいかがでしょう?無数の教訓を引き出すことができますよ。