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書評『滅びゆく中国の最期の悪あがきから日本をどう守るか』(兵頭二十八著 徳間書店)

 これがこの前買った兵頭二十八本最後の一冊です。それにしても読書スピードが落ちたと思いました。兵頭本は読みやすいので比較的読書速度は早いんですが、それでも読了まで一週間以上かかりました。我ながら年取ったと痛感した次第です。

 それはそうと本書ですが、戦前の日本の失敗、ロシア・シナの現在進行形の失敗を指摘し、潜在的敵国であるシナやロシアとどう対抗していくべきかを記したなかなかユニークな内容でした。

 兵頭さんはプロスペクト理論を軸に読み解いていきます。私も初めて聞いた言葉で最初分からなかったんですが、行動経済学における意思決定のモデルだそうです。兵頭さんによれば、人は経済行為として何かを決定する時数学の確率論に基づいた正答には沿わず、その人なりのプロスペクト(見込み期待)による損得勘定によって行動を決めていると言われます。

 博打で言えば、大多数の人は積み重なった損を挽回するため確率論上は無謀であるにもかかわらず大勝負しがちなのだそうです。そして大概大失敗してさらに損を拡大させます。加えて、人はがっかりしたくないために、確率論ではなく現実的ではないにもかかわらず希望的観測で動くものだと言われます。人類の歴史を見てもなかなか鋭い指摘だと思います。私も感心しました。

 大東亜戦争で日本は希望的観測で開戦し大失敗しましたし、ロシアも同じく希望的観測でウクライナを侵略し酷い目に遭っています。シナが近い将来台湾を襲うときにも希望的観測で戦争を仕掛けるだろうという兵頭さんの指摘は正しいと思います。では日本はどうすれば良いか?

 シナがロシアのウクライナ戦争で得た教訓は、戦争はできるだけ短期に終わらせ欧米諸国の介入の時間を与えず占領することです。ならば日本やアメリカはできるだけ戦争を長期化させシナを疲弊させればよい。そして戦争に勝っても良い結果を招かないように侵略戦争に加担したシナの政治家、軍幹部とその家族を経済制裁の対象にして資産凍結、欧米圏(=ほぼ全世界)での経済活動禁止。シナ共産党幹部は莫大な資産を海外に隠匿し万が一があっても一族が生き残れるように工作しているそうですが、それが戦争を仕掛けた途端雲散霧消してしまったら戦争する意欲がなくなるそうです。

 私はそこまでうまくいくとは限らないし、習近平政権が追い詰められ戦うも亡国、戦わざるも亡国に追い込まれたなら、それこそプロスペクトに基づき戦争を決断するだろうとは思います。ですから一つの見方としては参考になりますが、兵頭さんの理想通りには進まない可能性も高いとは個人的に思います。

 ともかくユニークな本であることは間違いないので、興味ある方は一読をお勧めします。