鳳山雑記帳はてなブログ

立花鳳山と申します。ヤフーブログが終了しましたので、こちらで開設しました。宜しくお願いします。

ドイッチラント級装甲艦(独)

イメージ 1

イメージ 2

 装甲艦、聞き慣れぬ艦種でしょう。もともと装甲艦というのは海軍史的には木造の船体に装甲と武装を施した艦種という意味で、別名「甲鉄艦」とも言いました。

 近代戦艦になる前の木造船との過渡期の艦形でした。ではなぜ明らかな近代艦艇である同級が装甲艦と呼ばれるようになったかについては深い理由がありました。


 第一次大戦の敗北で近代的戦艦の保有を禁止されたドイツでは、ヴェルサイユ条約下で許された、「旧式戦艦の代艦に限って、1基準排水量1万トン以下で主砲口径も28.3cmまでの保有を認める」という条件のギリギリまでを使って海軍を再建しなければなりませんでした。

 そのため28僂箸い戦艦並の主砲でありながら基準排水量1万トンという奇妙な艦を建造せざるをえませんでした。同クラスの重巡洋艦との交戦には攻撃力で勝り、戦艦との交戦は優速(28ノット)を利用して逃げるというコンセプトの船になったのです。


 ドイッチラント級は排水量を削るため涙ぐましい努力をしました。装甲も船体構造と一体化することで節約し、必要最小限の防御力を持つにすぎませんでした。

 同級建造の目的は、バルト海における制海権という限定的目標でしたのでそれでも良かったのです。

 巡洋艦よりは勝り、戦艦よりは劣るということでドイツ海軍は同級を装甲艦と分類しました。各国はこのユニークな船に「ポケット戦艦」という名前を与えました。私も装甲艦よりはこっちのほうがしっくりします(笑)。


 同級艦は3隻。ドイッチュラント(のちにリッツオウと改名)、アドミラル・シェーア、アドミラル・グラーフ・シュペー。


 しかし第二次世界大戦が始まると、本来の目的とは違った通商破壊に使用されます。これは劣勢のドイツ海軍においては猫の手も借りたい状態だったからです。


 一時的には大西洋だけならずインド洋まで進出する活躍ぶりでしたが、アドミラル・グラーフ・シュペーがロイヤルネイビーに捉まり南米、ラプラタ沖海戦で英海軍重巡エクゼター、エイジャックス、アキリーズの3隻と交戦します。

 シュペーは多勢に無勢、恐れていた防御力の脆弱性が表面化し大破してしまいました。そのまま中立国ウルグアイモンテビデオ港に逃げ込みますが英艦隊に囲まれます。脱出が困難であると判断し最後は自沈しました。

 他の2隻もノルウェーで米英のソ連へのレンドリース船団攻撃に駆り出されましたが、空襲などで失われることになります。




【性能諸元】

排水量 基準:11,700トン、満載:15,900トン
全長 186.0m
全幅 20.6m
吃水 7.25m
機関 MAN式2サイクルディーゼル機関8基2軸推進
最大出力 48930hp
最大速力 26ノット(公試時:28ノット)
航続距離 20ノット/10,000海里、10ノット/21,500海里
乗員 615~951名
兵装 28cm(52口径)3連装砲2基
15cm(55口径)単装砲8基
8.8cm(45口径)単装高角砲3基
(1935年:8.8cm(76口径)連装高角砲3基)
3.7cm(83口径)連装機関砲4基
50cm魚雷4連装水上発射管2基
装甲 舷側:60mm(シュペーは80mm)
甲板:40mm(シェーア・シュペーは45mm)
主砲塔: 140mm(前盾)、105mm(天蓋)
司令塔:150mm
艦載機 ハインケルHe60D
→アラドAr196水上偵察機2機、旋回式カタパルト1基