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宮城谷昌光「風は山河より」全5巻   いま読了しました。

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 風邪をひいて意識朦朧としていながら、何をやっているんだとお叱りを受けそうですが…、かねてから読もう読もうと思いながら機会がなかったこの本、ついに読了しました。

 それというのも1冊1700円という私にとってはものすごく高価な本だったんで、本屋で眺めつつもつい手が出なかったんです。ところが先日、近くの古本屋で1冊1000円で5巻そろっていたんで衝動買いしてしまいました。

 物語は、東三河の小領主、野田菅沼家三代(定則、定村、定盈)を主人公に織田、今川、武田という強大勢力に翻弄される三河の武士達を描いています。

 徳川家康の祖父、松平清康の英雄的覇業、父の横死を受け傾いた家運を必死で支える松平広忠と松平武士団の健気さ。他の小説では通り一遍の記述で済まされる三河の状況がここまで詳しく書かれると感心してしまいます。

 ただ私は、正直いって当初はあまり面白みを感じませんでした。舞台が東三河という狭い範囲であること、スケールが小さいことなどが原因です。話題作だから、まあとにかく最後まで読んでみようと思い、苦痛に耐えながら読み続けました。

 しかし、三代定盈が家督を継いだ頃から、物語は俄然面白くなってきます。今川義元の横死、徳川家康の台頭で徳川家についた野田菅沼家は、他家が徳川から武田に鞍替えする中で一人忠節を貫きます。

 そしてクライマックスの野田城の攻防。わずか500にも満たない城兵が武田軍三万の猛攻を一ヶ月も耐え抜きます。武田信玄からさえ感嘆される定盈の見事な指揮ぶり。この有能さが定盈の命を救ったといえます。開城後、信玄に自分に仕えるよう説得されますが、定盈は徳川家への忠義を忘れることはできないと拒否します。死を覚悟した姿勢がかえって信玄に殺すには惜しいと考えさせたのでしょう。

 人質交換で徳川家に帰参できた定盈を、浜松城で迎えたのはかってともに戦った家臣たちでした。この主従の感動の再会は私も思わずもらい泣きしてしまいました。

 菅沼定盈は歴史上では無名の人物ですが、このような脇役を主人公に選んだ宮城谷さんの慧眼には感服しました。それは氏が出身地である東三河を愛していらっしゃるからなんだなと思います。