鳳山雑記帳はてなブログ

立花鳳山と申します。ヤフーブログが終了しましたので、こちらで開設しました。宜しくお願いします。

ランチェスターの法則で見たウクライナ戦争

 読書量が昔と比べ激減した私ですが、学研の隔月刊『歴史群像』だけは定期購読しています。2023年4月号も先日買ったのですが、一押しのライター有坂純さんが今回も秀逸な記事を書いていました。くわしくは本誌を買ってください。歴史群像が廃刊になると私の生き甲斐が無くなるので一人でも多く読者が増えて欲しいと願っています。

 という事で簡単に紹介すると、『世界戦史 ウクライナ戦争を読む』の第2回の記事でランチェスターモデルでウクライナ戦争を読み解くという内容でした。ランチェスターの法則は本ブログで何回も紹介しているんですが、もし知らない人がいると困るので紹介します。

 ランチェスターの法則は、戦争における損耗を数理モデルで説明したものです。簡単に言うと例えばほぼ同じ能力の軍艦同士が撃ちあった場合、戦力の二乗に比例するので10隻と6隻の場合は劣勢の6隻が全滅するとき10隻側は8隻が生き残ると計算できます。現代戦はさらに複雑になったため上位モデルのQJMA(定量化決定方法論分析)やTNDM(戦術数値決定論モデル)も登場しましたが、一部しか公開されてないため詳細は分からないそうです。

 有坂さんはランチェスターモデルを基礎としQJMAやTNDMを分かる範囲で応用しウクライナ戦争を分析しています。2022年の開戦当時、ロシア軍は3個戦車師団、3個自動車化狙撃兵師団、1個戦車旅団、19個自動車化狙撃兵旅団、3個砲兵旅団の兵力でウクライナに攻め込みました。この戦闘価値を数値化すると7680になります。

 一方開戦から少し経って予備役を動員した後のウクライナ軍は、6個戦車旅団、26個機械化(歩兵)旅団、5個砲兵旅団、4個砲兵連隊、1個戦車大隊で5205の戦闘価値しかありませんでした。兵力比は3対2弱。ロシア軍の方が優勢ではあるが圧倒的ではなく開戦奇襲の混乱を除けばウクライナ軍が持ち堪えられたのもこれで説明できるそうです。

 個々の部隊単位で言うと、ロシア軍戦車師団の戦闘価値は595.8、自動車化狙撃兵師団で527.4、戦車旅団は184.5、自動車化狙撃兵旅団で112.5、砲兵旅団は40.5だそうです。ロシア自慢の大隊戦術群(BTG)に至っては44.3しかなく、ハイブリット戦で局地的戦闘をしている分には役立つが、ウクライナ戦争のような広域総力戦には不向きだと有坂さんは分析しています。私も全く同感です。ただでさえ脆弱なロシア軍の兵站が、実働部隊の細分化でさらに負担が加速するからです。

 ウクライナ軍がHIMARSなどを使ってロシア軍の兵站を叩いているのは理にかなっていると思います。有坂さんは、単純なランチェスターモデルに加えさらに複雑な計算で戦闘効果を説明していますから、詳しくは歴史群像4月号を見てください。立ち読みではなく絶対買ってくださいよ。何度も言いますが、廃刊されたら私の生き甲斐の一つが無くなるんですから!

 ウクライナ軍がNATOの武器弾薬の補給を受け増強された現在だと2.7倍の優勢にあると言われます。戦闘価値に加え撃破率の仮定に基づき計算するとロシア軍2460に対しウクライナ軍2000。ウクライナ軍が適切な用兵を行っている限り突破される可能性は低いそうです。

 有坂さんも多くの欧米軍事識者が指摘するように、ザポリージャ州の北からアゾフ海に到達する攻勢軸が有効だと見ています。私も賛同します。もしマリウポリに至る海への進撃を成功させれば、ロシア軍をクリミア半島とドンバス地方に分断でき、あとは弱い方を集中攻撃できます。アゾフ海の北岸を抑えれば、クリミア半島にロシア本土からの補給線であるクリミア大橋を攻撃圏内に収めることが出来ますから。クリミア奪還も現実味を帯びてきますね♪

 有坂さん、次号の歴史群像ではどんな切り口でウクライナ戦争を分析してくれるのか楽しみでなりません。もちろん戦争は悲惨なので一刻も早くロシア敗北で終わってくれるのを願うばかりです。