鳳山雑記帳はてなブログ

立花鳳山と申します。ヤフーブログが終了しましたので、こちらで開設しました。宜しくお願いします。

現代戦の補給と大隊戦術グループ

f:id:houzankaitachibana:20220303101812j:plain

 今回の記事はちょっとマニアックになるので一般の方はスルーしてください。

 

 大隊戦術グループ(BTG Battalion Tactical Group)というのはロシア軍の戦術単位です。通常

 

1個自動車化狙撃大隊(3個狙撃中隊基幹、これに迫撃砲中隊が加わる)

1個戦車中隊

1個砲兵大隊(2個砲兵中隊基幹)

1個電子戦中隊

 

から成り、1000名前後の兵士で構成されます。

 

 ロシア軍は、ソ連時代の強大な師団編制とは違い重要拠点(北方領土など)以外ではよりコンパクトな旅団編制に移行しています。規模も当然縮小し、冷戦時代みたいな100個以上の師団でNATO軍を強襲するというような恐怖は無くなりました。従来の師団編制中心なのは超大国アメリカだけかもしれません。日本の陸上自衛隊も師団編制中心ですが実質は旅団規模ですしね。

 

 米軍が最小戦略単位の師団をいくつかに分割し旅団戦闘団として実際の戦闘に当たる様に、ロシア軍も旅団を分割しBTGが実戦を担います。今回のウクライナ戦争でもロシア軍は100個以上のBTGを集めたそうです。私は気づかなかったんですが、ネットを見ていると現在のロシアの苦戦はBTGが原因ではないかという指摘がありました。私もロシア軍の兵站能力には疑問があって継戦能力を疑っていたんですが、BTGそのものを原因だと断じたのは目からうろこでした。

 

 BTGそのものは規模の大小はあれ世界中の軍隊が採用している戦闘団編制の一つですが、あまりにも数が多くなりすぎると戦場の末端まで十分な補給が行き届かなくなるのです。ただでさえ膨大な物資を必要とする現代の軍隊ですから、それが戦線の広域に広がってしまっては収拾がつかなくなります。

 

 現代戦の要は情報と補給。ウクライナのような広大な戦場ではまず戦線の後方に一大補給拠点を設けなければなりません。本国からの物資はここに集積されます。そこから前線に届けるわけですが、鉄道が縦横に走っている国(フランスなどが代表)はともかく、それ以外は輸送トラックで運ばなければなりませんし、それ自体も燃料を喰います。

 

 超大国アメリカですら、第2次大戦時西部戦線であまりにも進撃しすぎてドイツ国境に辿り着くころには補給が追い付かなくなりました。その間隙を突いたのが有名なドイツ軍のバルジの戦い(アルデンヌ攻勢)で、楽勝ムードの連合軍に冷や水を浴びせました。湾岸戦争の時はその反省を生かし砂漠に一大補給拠点を設け戦線が拡大するにつれリレー方式で拠点を設けて行き物資を送ります。米陸軍第82空挺師団の主任務は対戦車攻撃よりはむしろ補給拠点の構築と防衛だったほどです。ところがイラク戦争の時はイラク軍を舐め切って補給基地が十分に機能できないときに急進撃しすぎてバクダッド進撃時に一時的に補給切れになる危機がありました。

 

 アメリカよりはるかに国力が劣るロシアは、補給の負担に耐えれるのか危惧されていました。戦争前、元自衛隊幹部の軍事評論家がこぞって開戦はないと言っていたのはまさに補給問題があったからでした。ロシアや特亜のスパイのような反日左翼連中とは一線を画すべきだと思います。ただ平時でも20万近い軍隊が国境沿いに張り付いていたらそれだけで膨大な物資を消費するので私はいずれ何らかの行動はすると思っていましたが。

 

 NATOも部隊を送ることはしなくても衛星情報とか偵察機情報はウクライナに提供しているでしょうから、ロシア軍の補給拠点はウクライナも把握していると思います。ウクライナ軍はロシア本土から補給拠点、補給拠点から前線に向かう補給部隊の車列をゲリラ的に襲えばよいだけなので戦いやすいでしょう。

 

 補給の負担を考えると米軍のような旅団戦闘団(規模は4500名から5000名弱)くらいが限界なのかもしれません。もっともこれは大戦争で国外遠征をする場合で、国土防衛戦ならそこまで心配する必要はないのでしょう。