「敵基地攻撃」検討を本格化へ、ミサイル防衛の重層化図る…政府の国家安全保障戦略!
日本政府は迫り来る危機に対し遅きに失しながらもようやくまともな国防戦略を検討し始めました。ただ時間が許すかどうかは非常に疑問です。敵が撃ってくるミサイルは核弾道ミサイルの他に核と通常弾頭の巡航ミサイル、最近は現在の防空システムでは物理的に迎撃不可能な極超音速ミサイルまで登場しました。
まともな国防意識があるなら、専守防衛が第2次世界大戦の遺物で現代戦には全く通用しない化石のような概念だと理解できます。当時はミサイルもなく敵が上陸して初めて反撃できるという異常な概念ですから。本当に日本国民の命を守るなら敵がミサイル発射の兆候を見せたら即こちら側からミサイルを撃ち込んで破壊し発射させないことが重要です。これは国防の範疇です。実際は撃ち漏らしもあるでしょうから、日本に被害が生じたら何倍にも報復できる兵器も必要です。
その意味では、潜水艦から発射する巡航ミサイルは必要だと思います。最悪の場合日本の自衛隊基地は敵の巡航ミサイル、極超音速ミサイルの飽和攻撃で一時的に使用不能に陥っているでしょうから。艦船も横須賀、呉、佐世保、舞鶴にミサイル攻撃を受けたら何隻稼働できるか疑問です。ですから、有事になる前に潜水艦隊は出港しておき、敵が攻撃したら報復できる体制作りが必要だと思います。
日本政府は、この潜水艦発射型巡航ミサイルに12式地対艦誘導弾の長射程改良型を検討しています。現状12式は射程距離150㎞、改良型では1000㎞以上(1500㎞以上という話も)になるそうです。艦船発射型、航空機発射型、潜水艦発射型が開発中です。このうち、艦船型と航空機型は問題なくできると思います。
問題は潜水艦発射型で、一部にはVLS(垂直発射装置)を設けるべきだという意見もありますが私個人的には反対です。即応性から行けばVLSであることが望ましいんですが、自衛隊潜水艦の主任務は敵潜水艦の補足、破壊です。日本の潜水艦は他国に比べ静粛性に優れ潜航深度も600m以上あると言われます。これは最高軍事機密の一つなので断言はできませんが、おそらく西側ではアメリカのシーウルフ級に匹敵するかそれ以上だという話もあります。
ソ連の原潜に対抗するため最高の技術を結集したシーウルフ級は、コストが嵩みわずか3隻しか建造されませんでした。これではロスアンゼルス級を代替できませんから、より安価でそこそこの性能であるバージニア級を米海軍は採用しました。これも軍事機密なのではっきりとは言えませんが、バージニア級の潜航深度は488m、圧壊深度で590mだと言われています。攻撃型原潜でVLS搭載ならこれくらいで十分なんです。通常動力型潜水艦はせいぜい20ノットくらいですからね。
バージニア級のVLSは12基。理論上12発の巡航ミサイルを同時発射できます。その他米海軍は弾道ミサイル潜水艦を改造した改良型オハイオ級も保有しており、なんと154発も巡航ミサイルをVLSに搭載しています。日本が原子力潜水艦を保有するなら話は別ですが、通常動力型潜水艦にVLSを搭載するとどうしても潜航深度、圧壊深度が落ちてしまいます。水圧に耐えられるようにVLSの発射口を強化したらその分重くなり船体構造そのものが変わります。通常動力型潜水艦とくに日本の潜水艦は潜航深度が命。だとしたらVLSではなく魚雷発射管から巡航ミサイルを発射できるようにすべきです。
実は自衛隊の潜水艦も対艦ミサイルのハープーンを搭載しています。ハープーンの中には地上目標を攻撃できるものもあり自衛隊も導入するという話を聞いた記憶があります。その後どうなったのかは知りませんが…。12式改良型の潜水艦発射タイプがハープーンくらいのサイズで収まれば搭載できると思います。ハープーンから発展した長射程対艦巡航ミサイルLRASMのサイズが分かりませんでしたがどれくらい大きくなったんですかね?あまりハープーンとサイズが変わらないとすれば、12式改良の巡航ミサイルの魚雷発射管からの発射もできそうな気はするんです。
韓国が通常動力型潜水艦にVLSを設けて巡航ミサイルを搭載しようとしていますが、通常動力型潜水艦の主任務を考えれば愚の骨頂だと思います。もっとも韓国は通常動力型潜水艦の潜航深度も低いと言われてますがね。結局は12式改良型のサイズ次第。533㎜発射管に収まるサイズなら海自潜水艦に搭載も可能だと思いますし、有効な報復手段になり得ます。新たにVLS搭載の潜水艦建造を検討するならアメリカからロスアンゼルス原潜の中古を買え!と言いたいですね。あるいはバージニア級を日本用にも建造してくれるよう頼むという手もありますが、時間がないのと米議会が認めるかどうかは疑問です。
日本の国防の重要な問題ですから、12式改良型の巡航ミサイルがどうなるか非常に注目しています。