6日間戦争とは日本で言うところの第3次中東戦争の事です。1967年6月5日から6月10日まで6日間で終わったため欧米では6日間戦争という呼び名が有名です。ちなみに戦争の推移に関しては過去記事に書いていますのでご参考まで。
第3次中東戦争の航空戦は実質的にフランス製のダッソー ミラージュⅢCJが主役でした。もちろん開戦初頭の航空奇襲でアラブ側の航空機の大半を撃滅していたという事もありましたが、アラブ側の主力戦闘機であるMiG-21と似たようなコンセプト、すなわち軽量小型の機体に大推力エンジンを搭載し運動性重視の軽戦闘機でありながらミラージュのキル・レシオ(自機が1機撃墜される間に相手を撃墜する数)5:1という結果になった理由は何だったのでしょうか?
開戦時、イスラエル空軍は
ミラージュⅢCJ戦闘爆撃機×72機(3個スコードロン)
ウーラガン戦闘爆撃機×40機(2個スコードロン)
が主な兵力でした。
一方アラブ側は主力のMiG-21だけでもエジプト空軍120機、シリア空軍36機、イラク空軍40機など総勢1000機を超える大兵力を持っていました。
まともに戦ったら数の差で劣勢に陥るのは明らか。ですから戦争開始と同時に航空奇襲で敵基地を叩き戦闘機が発進する前に破壊したのは大正解でした。イスラエル空軍は戦争開始の最初の60時間でアラブ側戦闘機を450機も破壊したそうですから凄まじい。これに対しイスラエル側の損失は45機。それも大半は対空砲火にやられたもので空中戦での被害はわずか4機だけでした。
ですからミラージューⅢCJとMiG‐21の公平な評価はできないのですが一応機体の性能を比較してみます。
運動性のバロメーターともなる推力重量比はミラージュが0.61に対しMiG-21は0.76とむしろMiGが上回ります。推力重量比は加速力に影響を与えこれが1を超えると垂直上昇できるのです。
また翼面荷重も運動性に影響します。特に旋回性に。これは低いほど運動性が高くなります。ミラージュは295、MiGは218。
見てみると両者は運動性ではほぼ互角、というよりわずかにMiG-21の方が勝るとも言えます。
一方、アラブ側はソ連式の硬直した訓練方法を取り入れ地上のレーダー管制に従った機動しか許されていませんでした。これはベトナム戦争では有効な方法でしたが、技量差の大きいイスラエル空軍パイロットにとっては良いカモでした。
エジプト空軍は、自軍の訓練方法に疑問を持ちソ連の軍事顧問団と衝突したほどだったそうです。両者の技量差を示す実例として、イスラエル空軍ではミラージュだけではなくウーラガンやミステールのような旧式機さえMiG-21の撃墜記録を持っていました。
また使用するAAM(空対空ミサイル)の性能差も大きかったと思います。イスラエル軍ではこのころアメリカ製のAIM-9サイドワインダーと自国開発のシャリフを使用していました。一方アラブ側はサイドワインダーのデッドコピーであるR-3(AA-2アトール)。さすがにパクリ品だけに信頼性はサイドワインダーの方が上でした。