鳳山雑記帳はてなブログ

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書評 「歴史群像アーカイブ 中東戦争」

イメージ 1 最近買いました。なかなか面白かったです。
 
 実は中東戦争には興味があり、欧米の軍事史家の書いた本や、当事者の元イスラエル軍人が書いた本など関連本はかなり読みこんでいたので、目新しい情報はありませんでしたが、第1次中東戦争に至るまでのユダヤ、アラブ双方の歴史、第2次中東戦争での米ソ英仏の思惑、大国の論理など読み応えのある記事ばかりでした。
 
 この本を読んで、改めて感じることはソ連式の軍事ドクトリンは祖国防衛戦では真価を発揮しても、侵攻戦では弱点のほうが大きく出てしまって汎用性がないのではないかというところです。
 
 ドクトリンが官僚的で硬直してしまっているため、兵士の士気が高い時はカバーできても、士気が低いと決められた行動を繰り返すのみで柔軟性がなく、相手がそれを見極めたら容易に対処できます。
 
 逆にイスラエルは、タル理論という砂漠戦に特化した機甲戦術理論を独自に確立し部隊運用を柔軟にできたことが大きな勝因だったように思います。もちろん祖国防衛に燃えたイスラエル軍将兵の士気の高さはありました。満足な武器のない第1次中東戦争でさえ勝てた理由はまさに士気の違いだったでしょうから。
 
 あとは情報に関する意識の違いでしょう。イスラエルモサドをはじめとする情報機関を総動員して、アラブ側の政府の動向、軍事基地の場所、戦力、レーダー基地の探知力・範囲まで完璧に調べていたのに対しアラブ側にそうした様子が見えないのでは勝敗は戦う前に決しています。
 
 アラブ側に唯一勝つチャンスがあったのは第4次中東戦争における初期奇襲でしたが、硬直したソ連式ドクトリンで戦機を逃がし、イスラエルに立ち直りの時間を与えたのは痛かったと思います。
 
 
 
 中東戦争をまったく知らない人は大まかな流れをしることができるし、ある程度知っている人にも新たな発見がありますよ!