鳳山雑記帳はてなブログ

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中島二式単座戦闘機 『鍾馗』(しょうき)

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 これで大戦中の陸軍制式戦闘機は全て紹介したことになります。(一式~五式)

 なんでわざわざ単座とことわっているかというと、同じ二式の複座・屠龍があるからなんですね。隼や飛燕、疾風などとくらべ知名度の低い鍾馗ですが、実は私は大戦初期の陸軍戦闘機は隼よりこれに特化して生産すべきだったというほど評価しています。

 日本機らしからぬずんぐりとした機体は、爆撃機用のハ-109(離昇1,500馬力)【ただし二型から。当初はハ‐41 1250馬力を装備】を装備したからなんです。

 陸軍ではいままでの格闘戦主体から一撃離脱戦法が空戦の主体になるとの判断から1940年開発させた機体でしたが、それまでの格闘戦主体の九七式に慣れていたベテランパイロットから、操縦がしにくいと酷評されました。

 ところがドイツから輸入したメッサーシュミットBf109E型と模擬空戦させてみると、鍾馗の性能がこれを上回ることが判明し評価は一変します。機体とともに来日していたメッサーシュミット社のテストパイロットも
 「日本のパイロットが全員これを乗りこなすことが出来たら、日本空軍は世界一になる」
と言ったそうです。

 
 同じ重戦志向の海軍の雷電と比べても、強力なエンジンを紡錘形胴体でまとめた雷電に対し、鍾馗は機首が大きくエンジン直後から急に絞り込んだ胴体を持っています。これはドイツのフォッケウルフFw190と同じ設計思想です。空気力学的にはこちらが正解だったと言われています。


 1943年には、2000馬力級のハ145を搭載した性能向上型である三型も開発が進められますが、疾風の実用化が進められておりこれは実現しませんでした。

 大直径エンジンで駐機時の前方視界が悪く、着陸速度が速い癖のある機体は最後までベテランパイロットには敬遠されましたが、一度機体の特長を掴んだパイロットはその性能を十分に生かせたそうです。

 
 ハ145ではなく火星系のより稼働率の高いエンジンにしておけば鍾馗はもっと活躍できたでしょうが、直径がさらに太くなるので難しかったかもしれませんね。

 鍾馗の設計思想が優れていただけに残念でなりません!それもこれも奇跡の2000馬力エンジンと言われた小型のハ45(誉)に期待しすぎて、猫も杓子も誉搭載を要求した陸海軍の担当者に一番責任があるのかもしれませんが…。


【性能諸元】

正式名称 二式単座戦闘機二型丙
英名 Ki-44IIc
全幅 9.448m
全長 8.85m
全高 3.248m
翼面積 15m²
翼面荷重 184.67 kg/m²
自重 2,109kg
正規全備重量 2,764kg
発動機 ハ一〇九(離昇1,500馬力)1基
最高速度 605km/h(高度5,200m)
上昇力 5,000mまで4分26秒
航続距離 1,600km(増槽あり)
武装 胴体12.7mm機関砲×2(携行弾数各250発)、
翼内12.7mm機関砲×2(携行弾数各250発)
爆装 30kg~100kg爆弾2発または250kg爆弾1発
生産数 1,227機