鳳山雑記帳はてなブログ

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グラマンF6F ヘルキャット

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 第2次大戦中、米海軍が撃墜した9258機のうち実に5156機を撃墜したヘルキャット。日本人にとっては憎んでも余りある敵です。
 
 戦史に詳しくない方も名前くらいは聞いた事があるでしょう。ヘルキャットやF6Fは知らなくとも「グラマン」という名で。
 
 一般に、大戦初期日本海軍の零式艦上戦闘機に苦しめられた米海軍がそれまでの主力戦闘機グラマンF4Fワイルドキャットに代わる戦闘機として開発したと言われますが、これは間違い。
 
 開発のスタートは1938年。もともとF4Fの後継艦上戦闘機としてチャンスボートF4Uを開発していた海軍ですが、万が一これが失敗した時の保険としてグラマンに新戦闘機開発を命じたのが最初でした。
 
 F4Uは、2000馬力エンジンP&W R2800装備で高速を目指すため機体をエンジン直径ぎりぎりに絞り、大馬力を効率よくスピードに転換できる4メートルもの大直径プロペラを採用し、そのために主脚が長くなって脆弱になるのを恐れ逆ガル翼を採用するなど設計が野心的過ぎました。
 
 海軍当局がF4Uの完成を危ぶんだのも理解できます。ただ保険と言われたグラマンの社長ルロイ・グラマンは憤慨したそうですが(苦笑)。
 
 グラマン社は、「F4Fワイルドキャットの改良版でいい」と海軍からあまり期待されなかった事に発奮し、技術的冒険を一切せずに堅実な戦闘機を完成させてやろうと意気込みます。
 
 採用したのはF4Uと同じR2800エンジン。ただしF4Uのような無理をせず余裕のある機体設計にしました。機内スペースに余裕があるため燃料タンクも翼内に2つ、胴体に1つ大きなものを設け、防弾装甲も十分、特に一番危険な操縦席後方には12.7㎜機銃弾に耐えられる物を2枚設置しています。
 
 これは生存性を高め、ヘルキャットは落としにくい戦闘機となりました。日本軍パイロットの証言でもあるとおり「いくら機銃弾を撃ち込んでもびくともしなかった」そうです。
 
 それに意外かもしれませんが運動性もアメリカ軍機にしてはかなり高かったようです。日本軍機との比較テストではさすがに零戦には負けるも疾風や飛燕よりは上回っていました。
 
 米軍パイロットにとって操縦しやすい戦闘機で、特に新人は癖のあるF4UコルセアよりF6Fの方を好んだそうです。操縦しやすく防御力が高いという事は生存率を高めパイロットに経験を積ませる事が出来ます。そうすると必然的に技量は上がり日本軍パイロットにとってはますます手強くなるのです。
 
 冒頭で、ヘルキャット零戦に対抗するために開発された機体ではないと言いきりましたが、零戦の情報が入ってくるとそれに対抗するために何回か改修されたそうですからまったく無関係とはいえないかもしれません。
 
 
 先に開発スタートしたF4Uが、逆ガル翼の特性(低速時に失速しやすい)から艦上機としての任務を危ぶまれ最初は海兵隊で使用されながら改修をつづけられ、ようやく空母上の運用ができたのが1944年に入ってからだったのとは対照的に、ヘルキャットは1943年1月には早くも空母上の運用が開始されます。
 
 
 日本軍のあるエースパイロット(名前は失念)は、ヘルキャットと初対決した印象を
 
◇旋回性能と航続力は零戦が上回る。
◇スピードと上昇力ではヘルキャットが上。
◇格闘戦に入れば日本機が有利だが、相手は一撃離脱戦法で来るため手に負えない。
◇追いかけても急降下で逃げられるため追いつけない。
◇機銃の集弾性がよく初速も速いため後方から撃たれたらかわすのがやっと。機体をすべらせて(横ロールの事?)赤い弾道が機体の脇を通過した時はぞっとした。
 
と上げています。F6Fの恐ろしさが良く分かる証言ですが、敵の必殺の銃撃をかわす日本のエースパイロットも大概だと思います(爆)。
 
 
 こういうエースなら零戦52型でもなんとか対抗できたでしょうが、碌に訓練していない新米パイロットにはとても手に負えない相手でした。
 
 F6Fの初期型(F6F-3)の最高速度603km/hを2000馬力エンジンにしては遅いのではないか?と批判する人がたまにいますが、誰にでも操縦しやすく運動性が高く防御力も十分という機体でこれ以上何を求めようというのでしょう?
 
 それは速いに越した事はありませんが、離着陸時の前方視界が悪く低速時に失速しやすい機体(F4U)は空母上で運用するのが難しいものです。結局逆ガル翼からくる失速問題は根本解決できずパイロットに「気合で乗れ!」とどこかの軍隊のような無茶を要求した機体よりははるかにましだと思いますが(苦笑)。
 
 
 とはいうものの、私はデザイン的にはコルセアが好きなんですよね(笑)。
 
 
 冗談はともかく、グラマンF6Fヘルキャットは、「平凡なる傑作機」と言えるでしょう。
 
 
 
【性能諸元】(F6F‐5)
 
自重:4190kg
全備重量:5779kg
エンジン:P&W R2800 離昇出力2000hp
最大速度:612km/h 高度7000m
上昇限度:11380m
航続距離:2180km
武装:12.7㎜機銃×6 (固定武装
    1000ポンド(454kg)爆弾×2
    127mmロケット弾×6