埋蔵金がらみでもう一つ。高名な推理作家高木彬光も徳川埋蔵金に関する歴史推理小説を書いています。それも記念すべき墨野隴人シリーズの第1作目として。
この墨野隴人シリーズは知る人ぞ知る傑作推理で、なぞの紳士墨野隴人の推理を、愉快な未亡人(メリー・ウィドウ)と呼ばれ気ままな生活を送る村田和子を通して語るシリーズです。全5作あります。「黄金の鍵」「一、二、三─死」「大東京四谷怪談」「現代夜討曾我」「仮面よ、さらば」のそれぞれが面白い作品ですが、さらにシリーズ全体を通しても大きな謎を孕むという凝った趣向をしています。
最終作の「仮面よさらば」では、高木氏のもう一人の名探偵神津恭介と墨野隴人の対決もあり読み応えあります。ラストは衝撃的な結末でしたが…。
さて本作「黄金の鍵」ですが、ここでも墨野隴人(=高木彬光)の推理の冴えを味わえます。巷で言われている徳川埋蔵金の致命的な欠点、埋蔵金はどこにある(可能性が高い)のか?を示しながら、あっと驚く結末が用意されています。これは神津恭介シリーズの「邪馬台国の秘密」にも匹敵する名推理でした。
ここでそれを紹介すると、一生懸命徳川埋蔵金を探している人たちに悪いので書きませんが、もし興味がある方は古本屋で探してみてください。できれば神津恭介シリーズを何冊か読破してから挑むのが望ましいのですが…。