鳳山雑記帳はてなブログ

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書評『沖縄シュガーローフの戦い』(ジェームズ・H・ハラス著 光人社NF文庫)

 先月久しぶりにブックオフに寄り古本を買いました。一つは『村上海賊の娘』(全4巻)で、他に『わかりやすい朝鮮戦争』『沖縄シューガーローフの戦い』です。この中で、わかりやすい朝鮮戦争はすでに10年前にアマゾンで購入していました。一度読んだ本なのに途中まで気付かなかった私の記憶力に絶望した所です。こういう事が良くあるんですよね。失敗の本質という本に関してはアマゾン、古本屋あわせてこの数十年のうちに同じ本を3冊も買っていました。呆れるほどの記憶力の無さです。

 最初に重い本、最後に軽い本を読んだ方が精神衛生上良いと思って沖縄シュガーローフの戦いを読みました。この本は新聞編集者ハラスが当時沖縄戦に参加した海兵隊員にインタビューし、沖縄戦最大の激戦地の一つシュガーローフの戦いの実情を描いたものです。

 実は私もブログで『沖縄戦シュガーローフの戦い』という記事を書いており、どういった戦いだったか興味がある方は一読をお勧めします。日本軍が文字通り全滅するまで戦った激戦で、攻める米軍も大きな損害を出しました。私は最近読書スピードが落ちているんですが、この本では〇〇州出身の某がどういった性格でどのように戦いどのように死んだかという事をこれでもかと書いているので読み進めるのに非常に苦痛でした。どれだけ戦争が悲惨かを思い知らされました。

 砲弾で頭が吹っ飛ばされた兵士、蛸壺の中に日本軍の手榴弾が飛んできて両足が吹っ飛ばされた兵士、機関銃陣地を守っていた兵士に声をかけたところ返事がなく、よくみたらヘルメットの中央を銃弾が貫通し死んでいた者など夢に出そうな地獄絵図のオンパレードでした。シュガーローフがいかに激戦だったかは、指揮官クラスも数多く戦死している事でも分かります。日本軍の狙撃兵は優秀らしく、指揮官を優先して狙撃したと言われます。

 この本では米軍の被害ばかり書かれていますが、当然日本軍も同じかそれ以上に損害を受けていたわけで、激戦の末米軍がシュガーローフ、ホースシュー、ハーフムーンヒルの複郭陣地を攻略した後現地を見ると日本兵の死体で埋め尽くされていたそうです。それも湿気の多い土地ですから腐乱し一部は白骨化していたと言われます。米軍は自軍兵士の死体は収容しましたが、日本兵の死体はそのままにし上に土を数せた程度。ですから戦後この地を再開発した時数多くの人骨が出土したそうです。

 このように戦場の悲惨な状況を読まされるんですから1日数ページが限度、本当に読了するのに苦痛でした。しかし我々の先人がどう戦ったかを後世に生きる日本人は知るべきだし、このような先人がいたからこそ今の日本があると感謝すべきだと強く思いました。

 著者のハラスは、沖縄を防衛した第32軍司令官の牛島中将、反斜面陣地を構築し米軍を苦しめた高級参謀八原大佐の事は高く評価しており公平な立場で書いていたのが印象に残っています。一方、インタビューに答えた元海兵隊員ですが未だに日本を憎んでいる者が数多くいたのはアメリカ人の民度の低さを実感しました。

 日本軍は守る側、米軍は攻める側、日本側が必死に戦ったのは当然ですよ。祖国防衛戦争なんですから。いくら戦友が数多く戦死し自分たちも五体満足じゃなかったとしても攻めたほうがいつまでも相手を憎み続けるのはどうかと思いますよ。今で言えば侵略者のロシア兵が戦友を数多く殺されてウクライナ人を憎しみ続けるのと同じです。

 戦争の実態を伝える貴重な本だと思います。戦史に興味のある方は苦痛だと思いますが一読をお勧めします。私は現在、村上海賊の娘を読んでますが、シュガーローフの戦いの方を先に読んでおいてよかったと痛感しています。村上海賊の方は歴史エンターテインメントなので、寝っ転がって軽い気持ちで読めますから。シュガーローフは絶対にそんな姿勢では読めませんし、続きを読む時もかしこまって読まなければならないほど重い本でした。