鳳山雑記帳はてなブログ

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メルカバ戦車  (イスラエル)

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 メルカバとはヘブライ語で戦車(Chariot)のこと。イスラエルのような小国は人口も少なく兵士の死傷が戦力ダウンに直結するため、人命重視=防御力を最優先とする国産の新戦車の必要性を痛感していました。
 
 1970年代、メルカバ戦車はイスラエル独自の機甲ドクトリンを提唱したタル少将(タル理論と呼ばれる)が主導したプロジェクトチームによって開発されます。
 
 
 メルカバの特徴は、ほとんどの戦車がエンジンを車体後方に置いたのに対し車体前面に持ってきた事です。これにはデメリットもありエンジンが被弾すると走行不能になるのですが、一方敵弾が車体前面装甲を貫いてもエンジンルームが事実上のスペースドアーマーとして利用でき生存性が高くなるというメリットがありました。
 
 もちろん重いエンジンが前面にあるため、バランス調整のために砲塔を後ろにずらさざるを得ず車体が主砲発射の衝撃を十分吸収できないためさらに装甲を増やして重くなるという悪循環にもなりました。ただ人命最優先というコンセプトからいえばそれで良かったのでしょう。
 
 メルカバは、複合装甲と相まって戦後第三世代戦車のうちでもトップクラスの防御力を誇る戦車となりました。またエンジンが前にあるため車体スペースに余裕ができ後方ハッチから出入りできるようになりました。
 
 一般にこれで兵員6名ほどを輸送できるので装甲兵員輸送車にも使えると言われますが、これは間違い。通常は弾薬などを積み兵員輸送は緊急時のみです。戦車と装甲兵員輸送車は用途が違うため同じ運用はできません。
 
 メルカバの特徴は、対戦相手のソ連製戦車を想定して決定されました。というのもソ連製戦車は照準装置が甘く500m以上ではほとんど当たらなくなるそうです。現在では改善されているとは思いますが、イスラエル陸軍は戦車の対戦距離を1500m以上と想定します。当時ソ連が衛星国や中東諸国に供与していたAPFSDS(装弾筒付翼安定徹甲弾)はタングステン弾芯ではなく普通の鋼製弾芯でした。威力が半減し長距離になればほとんど効果を無くすものだったため、イスラエル軍にとっては長距離でも威力の変わらないHEAT(成形炸薬弾)だけが脅威でした。(あと対戦車ミサイルも!)HEATにはスペースドアーマーが効力を発揮するためエンジンを車体前面に持ってきたのだそうです。
 
 主砲には当時西側標準だった105mmL7ライフル砲を採用します。ただしイスラエルタングステン弾芯のAPFSDSを1970年代開発していましたから、防御力の弱いソ連製戦車に対しては十分太刀打ちできると踏んでいました。
 
 最初の量産型メルカバMk1の運用開始が1979年4月。1982年のレバノン侵攻、ベッカー高原の戦車戦でシリア軍のソ連T-72に対しパーフェクトゲームを演じたのはこの型です。ほとんどの場合1500m以上の距離で初弾を命中させAPFSDSで一方的に破壊したそうです。
 
 砲塔に増加装甲を施したMk2は1983年に登場します。メルカバMk3は1990年より実戦配備。なんといっても120mm滑腔砲を装備したのが特徴です。エンジンも1200hpに強化されメルカバの弱点だった機動性が改善されます。
 
 イスラエル陸軍現在の主力戦車メルカバMk4は今までの戦訓を取り入れ防御力がさらに強化されていますが、あまりにも増加装甲をつけすぎて恰好が良くありません。口の悪い者はカネゴンとかソロバン砲塔とか言って揶揄しています(私もですが)。知らない人はけっして画像検索しないでください(爆)。エンジンも1500hpにさらに強化されます。
 
 結局、能力とデザインのバランスが一番良いのはMk3という事になりますな(笑)。
 
 
メルカバMk4 性能諸元】
 
全長:9.04m
全幅:3.7m
重量:65t
速度:60km/h(整地)、55km/h(不整地)
行動距離:500km
主砲:44口径120mm滑腔砲L44
エンジン:ターボチャージドディーゼル1500hp
乗員:4名