世間で非常に人気のある三国志。読者それぞれがお気に入りのシーンをもっていると思います。私鳳山もあるシーンがとても気に入っています。
呂布を滅ぼし、都許昌に凱旋した曹操が、劉備を招いて梅を愛でながら酒亭で英雄を論じるところです。実は、劉備は献帝から曹操討伐の密勅を受けた董承の同志に名を連ねていましたから、警戒してなかなか本心をだしません。曹操は無理に劉備に「英雄とは誰ぞ」と言わせます。しかたなく劉備が挙げた袁紹・袁術・劉表・孫策らを一言で斬り捨てます。さらに「もう他にいないのか?」と劉備を困らせます。
そして、「英雄とは大志を抱き、万計の妙を蔵し、行って怯まず、時潮に遅れず、宇宙の気宇、天地の理を体得して万民の指揮にのぞむ者でなければならん。」と断じます。
驚いた劉備が「そのような者がおりましょうか?」と尋ねると、「いる」と劉備を指し、そして自分に向け「君と余だ!」と叫びます。
このシーンが、とてもかっこ良いのです。その瞬間に落雷があって、曹操が自分をそこまで恐れているのかと警戒した劉備が、とっさに雷におびえる演技をします。こんな単純な演技ですが、曹操は信じます。あとで曹操は後悔しますが、後にも先にも劉備が曹操をだますのはここだけでしょう。
曹操の英雄論も興味深いものがあります。そして曹操・劉備の蜜月時代もこれが最後でした。このあと両雄は二手に分かれて合い争うようになっていきます。