鳳山雑記帳はてなブログ

立花鳳山と申します。ヤフーブログが終了しましたので、こちらで開設しました。宜しくお願いします。

古代の武器の強靭さ

 たまたま古代の武器の強靭さを調べていて青銅剣や鉄剣でどれくらい強さが違っているか興味が湧きました。過去記事で『金属の硬度』について書いた記憶があるのですが、今回は古代から使われたであろう武器の材質に限定して調べてみました。参考までにタングステンとダイヤモンドの数値も載せておきます。

 過去記事と数値が微妙に違うのは資料によって異なるからです。ですからあくまで参考程度に捉えてください。ちなみにモース硬度はその材質の単純な硬さを示しており、ビッカース硬度とはその材質に圧力を加えた場合の反発力を示しています。私のような素人には分かりませんが、硬さというより強靭さを示しているように思えます。もし事実と異なるという方はお教えください。修正します。

 さて、古代人類が最初に使った金属は銅だと言われます。これだと武器に使用すると脆すぎるので、銅に錫を5%~10%くらい混ぜた合金である青銅が普及しました。一方、武器になったかどうかは分かりませんが銅に亜鉛を35%くらい混ぜると真鍮ができます。

 鉄は銅と同じくらい前から知られていましたが、自然界に存在する鉄(自然鉄)は硬くはあるものの錆びやすく脆い金属でした。ですから青銅のほうが広く普及したのですが、鉄鉱石から木炭などを燃やして鋳造した鋳鉄が登場します。鋳鉄は炭素を2.1%~6.67%含んでいました。

 古代アナトリア半島に勃興したヒッタイト帝国は、鋳鉄を何度も焼き入れて硬化する浸炭法という技術を開発します。これが表面硬化鋼と呼ばれるもので鋼鉄の一種でした。浸炭法で作られた鉄剣がどれくらいの強靭さを持っていたかは不明ですが、それに近いと思われる錬鉄のビッカース硬度を見ると200となり銅剣や青銅剣を圧倒しています。

 ヒッタイト古代オリエント世界を席巻した理由も分かりますね。ヒッタイトは浸炭法を国家機密として保持したそうで、浸炭法で作られた武器は同じ重さの黄金と取引されたほどだとも言われます。しかし栄枯盛衰は世の習い。ヒッタイト帝国滅亡で浸炭法はまず中東世界に拡散しました。

 その後森林資源が豊富な草原の道を通じてアジアに拡散します。遊牧民族である突厥ウイグルが優れた製鉄技術を持っていたのもそのためです。彼らは草原の北側に広がるシベリアの豊富な森林資源を利用しました。一方インドから東南アジア、シナ大陸や日本に渡った技術もあるそうです。日本に製鉄法が伝播したのは大陸から半島を通じて来たというのが通説ですが、私は東南アジア、シナ大陸沿岸部から海路渡ったケースもあったと考えています。

 なぜなら、朝鮮半島は森林資源が乏しいからです。製鉄に不可欠な木炭を作るために木を伐採すると森林の再生に時間がかかるか、再生そのものができない場合も多かったと思います。実際、アナトリア半島やシナの関中地方(長安を中心とする秦嶺山脈とオルドス地方に挟まれた盆地)が荒廃しているのは、古代に森林を伐採しすぎたせいだとも言われるくらいです。

 高温多湿な日本ですら、計画的に伐採、植林を続けなければ製鉄ができませんでした。それくらい木材資源を使うのです。製鉄に木炭ではなくコークス(石炭を1200度で蒸し焼きにしたもの)を使うようになったのは1735年だと言われますが、時代の要請だったのでしょうね。