鳳山雑記帳はてなブログ

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書評 「海軍設営隊の太平洋戦争」 (佐用泰司著 光人社NF文庫)

 元海軍設営隊士官、佐用泰司氏による名著です。私はこういう兵站に携わる裏方の話が大好きですのでとても勉強になりました。
 
 設営隊というのは、その名の通り海軍の活動を支えるために航空基地を設営したり要塞を建設したりする部隊で、陸軍でいえば工兵(厳密に言うと戦場で陣地設営などをする戦闘工兵と後方で様々な施設建設を行う建設工兵を合わせたような部隊)にあたります。
 
 意外なようですが、陸軍工兵にしても設営隊にしても機械化されていました。これは当然で人力でジャングルを切り開こうとすれば気の遠くなるような作業量になるからです。ただ海軍がブルドーザーの存在を知ったのは大戦初期にアメリカ軍の遺棄したものを接収したのが初めてで、慌てて日本でもコピーして生産したそうですがオリジナルに比べると能力は劣ったそうです。
 
 
 本書は佐用氏が部隊指揮官としてニューギニア西部(ソロンなど)で基地建設に悪戦苦闘するところをリアルに描いています。まず輸送船で現地に行くまでが一苦労で友軍部隊が途中で米軍の潜水艦攻撃で海没するシーンなど戦慄せざるを得ませんでした。
 
 
 現地に到着しても、資材の陸揚げがたいへんでその途中で米軍の航空攻撃で水の泡になる事もしばしばあったとか。
 
 何もないジャングルを切り開くわけですから、まず設営隊の住処を建設するところから始めないといけなかったそうです。設営隊は一刻も早く航空基地を稼働させるため作業の優先順位を決め効率よく進めていきました。
 
 マラリア対策で湿地調査、基地機能維持のための無線施設の防御工事、野戦病院の場所選定、マンゴー、バナナなど野生植物の食糧調査など設営隊の仕事は無限にあるんだなと感心することしきりでした。
 
 
 土地調査でジャングルを踏破中、天然の温泉を発見するところなどほのぼのするシーンもあります。南方の酷熱地獄で戦っている将兵には何よりの娯楽だったろうなと想像できますね。
 
 
 また本書は巻末に設営隊編制に関する資料を添付してあり資料的価値も高いです。ロジスティクス兵站)に興味のある方(いるのか?)にお勧めです♪なお陸軍工兵隊に関しては同じ光人社NF文庫の佐山ニ郎著「工兵入門」をどうぞ!(笑)