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世界史英雄列伝(13) スラ 閥族派の巨頭

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◇ルキウス・コルネリウス・スラ BC138~BC78

BC111年~BC105年 ユグルタ戦争に従軍。軍功をあげる。
BC93年      法務官就任。
BC91年~BC88年  同盟市戦争。軍功をめぐり平民派のマリウスと対立。
BC88年      執政官(コンスル)就任。ミトリダテス戦争の指揮権をめぐってマリウスと対立。
         マリウスは難を避けアフリカへ逃亡。
         スラ、軍を率いミトリダテス討伐に出陣。
         後事を託したキンナの裏切りにあう。キンナ、アフリカからマリウスを呼び寄せる。
         マリウス派、ローマに実権を握る。
BC86年      マリウス死去。スラ、ミトリダテス軍を破り、2年かけてローマに進軍。
BC81年      スラ、無期限の独裁官(ディクタトル)に就任。
BC78年      死去。

 当時、ローマは内乱の1世紀と呼ばれる混乱の真っ只中にいました。土地を持った市民による軍団は彼らの没落によって編成困難になりました。BC107年、平民出身のマリウスは軍制改革に乗り出します。兵士を市民から志願兵による編成と改めたのです。これでローマ軍制の維持はできたのですが、その弊害として兵士が国家でなく軍の指揮者に忠誠を誓うようになったのです。マリウスは自分の部下の力を背景にローマで実権を握ります。
 一方、ユグルタ戦争の指揮をしていたマリウスの部下にスラがいました。騎兵を指揮していたスラでしたが、その才能は外交にありました。マリウスの勝利を背景にユグルタ軍の内部分裂を図りついにユグルタを捕らえます。
 軍功も重ねたスラは頭角をあらわしていきます。マリウスと袂を分ちBC93年には法務官就任。BC91年に起こった同盟市戦争では一方の雄と成っていました。同盟市戦争とは、ローマと同等の市民権を求めての蜂起でしたが、スラはここでも大功をあげます。しかし戦後、マリウスと軍功をめぐって対立します。
 マリウスが平民派の首領なら、名門コルネリウス一門出身のスラは閥族派の雄でした。
 BC88年、執政官に就任したスラは小アジアで蜂起したポントス王ミトリダテス討伐を準備します。ところがマリウスも志願したため事態は混乱します。しかし政争にやぶれたマリウスはアフリカへ逃亡しました。
 後事をキンナに託し、不安を残しながらスラはミトリダテス討伐へ向いました。そしてその不安は最悪の形で実現しました。キンナが裏切ったのです。マリウスはキンナの誘いに乗りローマに進軍します。
 ローマを制圧したマリウスは新たにミトリダテスとスラを討伐するため軍を派遣します。
 絶体絶命の危機でした。前後に敵を迎えるスラはしかし落ち着いていました。まず不足するのは戦費です。スラはなんとデルフォイの神殿はじめいくつかの神殿を資金の調達源としました。各地の神殿に使者が走ります。その中でオリンピアの神殿だったと思いますが、神殿に使者が入ろうとすると、中から荘厳な神の声を聞いたといって使者が恐れ逃げ帰ってきます。報告を受けたスラは「馬鹿だな、神様は資金を好きなだけ持っていって良いといわれたのだよ。」と言いました。なんとも人を食った話です。その前に神殿から資金を強奪(後で返すと約束はしましたが)するという発想は常人の考えではありません。
 スラは、この危機をマリウスの派遣した軍を懐柔して自分の兵力にすることで解決します。そして自分の役割はまず、ミトリダテスを倒す事だと決め、実行します。スラ率いるローマ軍の前にはポントス兵など鎧袖一触でした。ミトリダテスを下すと、スラは2年をかけてゆっくりローマに進軍します。
 マリウスはすでに死去していました。ローマを制圧下においたスラは、無期限の独裁官(ディクタトル)に就任、早速反対派の粛清にはしります。このとき、若き日のガイウス・ユリウス・カエサルも処罰リストに入っていました。キンナの娘を妻にしていたためです。
 周囲は、カエサルが年少でまだ政治的活動をしていないことに同情し、リストから彼をはずすようスラに頼みます。
 しぶしぶこれを聞き入れたスラでしたが、「君たちは分からないのか。あの若者の中には百人ものマリウスがいることを。」と言ったと伝えられています。英雄、英雄を知るでしょうか。
 キンナの娘との離婚を条件に許されることになったカエサルでしたが、なんとこれを拒否、小アジアに亡命します。
 独裁官としてローマの改革を目指したスラでしたが、役割を終えると独裁官を辞任し引退します。そしてまもなくしてなくなります。その墓碑銘も最後まで人を食ったものでした。
 「味方にとってはスラ以上に良きことをした者はなく、敵にとってはスラ以上に悪しきことをした者なし。」