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パラグアイ戦争と太平洋戦争の教訓

 今回の記事は与太話なのでまじめな歴史記事を求める方はご遠慮ください。

 パラグアイ戦争と(南米の)太平洋戦争は現代を生きる我々にも多くの教訓を残していると思うんです。負けた側はどうやったら勝てたか?勝てないにしても破滅を防ぐことはできなかったのか?あくまで個人的見解ですが、軍事知識、地政学的知識も総動員して勝手に語りたいと思います。



 まずパラグアイ戦争。いくら国内が団結し強大な軍隊を持っていても周辺諸国全部に喧嘩を売ったら勝てるわけがありません。誰かが言っていましたが、当時のパラグアイドイツ統一前のプロイセンと似ていると。

 パラグアイが失敗しプロイセンが成功したのは、戦争の前に外交の限りを尽くして敵を一つに絞ったからです。まずオーストリア、次いでフランス。ロシアとイギリスは外交で融和し戦いを避ける。まさにビスマルク外交の賜物ですが、パラグアイにはそれがなかった。

 しかもウルグアイという戦略的にはどうでもよい国に固執して大戦略を誤ったことは指摘しておきたい。パラグアイの地勢を考えると、ブラジルは人口希薄地のマットグロッソ州で接しているだけで、ブラジルの戦略的重心である大西洋沿岸部は余りにも遠い。むしろパラグアイが主敵とすべきはパラナ水系を押さえられたら経済的に干上がるアルゼンチンではなかったかと愚考します。

 ブラジルとアルゼンチンの対立をうまく煽り、ブラジルと同盟してアルゼンチンを孤立させ戦争を仕掛ければ勝つチャンスもあったと思います。ただ確実に勝てるかどうかは戦術次第。しかし史実のように国が破滅することは免れたかもしれませんね。






 次に(南米の)太平洋戦争。ペルーとボリビアは、自国領のアタカマ砂漠に膨大な硝石鉱山が見つかった時点でチリとの戦争を準備しておくべきでした。その準備もなしにボリビアのダサ大統領が硝石輸出に関税をかけチリ系企業を接収したのは愚の骨頂です。加えて戦争を想定するなら自国領のアントファガスタ市にチリ系市民が9割というのもあり得ない。ダサ大統領の愚かな行為のおかげでチリに宣戦布告の口実を与えたのですからどうしようもないですね。

 チリは海軍力でペルーよりもやや優勢と踏んでいた可能性があり、ダサ大統領の行動で自国民保護という大義名分まで得ました。陸軍が互角とするなら海軍が戦いの帰趨を握るので、その方面でもボリビアは全く準備していなかったですね。

 ボリビア本土は、アルトペルー(高地ペルー)地方と呼ばれたアンデスの高原地帯で現在のボリビアと重なります。そこから沿岸地帯に降りてくるのに満足な鉄道もなかったそうですから、これでは本土から主力軍を送ることもできませんし、補給線の維持も厳しくなります。

 ペルーはそれよりはましですが、陸路ではアタカマ砂漠の戦場に陸軍を送り込むことは難しくこちらも補給がネックとなります。ペルーは、海上輸送を使って兵站を維持する必要がありますが、チリ側は当然これを見越して海戦を仕掛けペルー海軍を潰すのですから、この時点で勝負ありました。

 後はチリ側が逆に戦場を選べるようになります。制海権を握っているので、ペルー沿岸部の任意の地に陸軍を送り込むこともできますし、海上から補給することが可能です。しかもペルーの首都リマは沿岸部にあり、海上からの攻撃に脆弱だと言う致命的欠点がありました。

 チリ本土へ逆侵攻するのも、広大な砂漠を突っ切らないといけないため現実的ではない。難しい戦いでしたね。ペルーは思い切って首都をリマから内陸のクスコに遷都し、アンデスの天険を頼んで持久戦法に徹していれば勝機はあったかもしれません。何しろ国力はチリよりも上なんですから。

 実はボリバルの解放軍がペルーに来た時、ペルー副王ラセルナの採った戦術がこれでした。ボルバル軍は攻めあぐね非常に苦戦します。海岸地帯では徹底的な焦土作戦を実行しチリ軍に現地補給をさせない。そこまで覚悟できないなら本来戦争すべきではなかったかもしれません。もっとも喧嘩を売ったのはチリの方ですが…。





 こうしてみると、地政学的に普段から戦略を練っておき、仮想敵との戦争計画、戦争の準備は前もってしておく必要があります。地勢によって戦い方が変わってくるのは当然で、敵に囲まれていたら同時に複数を相手にせず敵を一つに絞る。海上兵站戦が重要な戦場なら海軍力の整備は必須です。

 そして本土決戦は悲惨な結果になるから絶対に避ける。その意味では専守防衛がいかに無意味で害悪しかないかご理解いただけると思います。