前記事の続きです。イージスシステムの中核とも言うべき艦対空ミサイルスタンダード。いろんな型があって混乱すると思うので私なりに最大公約数的に纏めてみました。
最初の型はSM-1シリーズで、射程は50kmから60km。セミアクティブレーダーホーミングで比較的システムが簡単な事からオリバー・ハザード・ペリー級フリゲートなどの4000t級の艦艇にも搭載されます。
これに対し、もっと長射程のミサイルが欲しいという米海軍の要求で開発されたのがSM-2シリーズです。セミアクティブレーダーホーミング(以後SARHと略)に加え慣性誘導、データリンクで誘導し精度が増しました。ただシステムがどうしても大型化せざるを得ず、ヴァージニア級原子力ミサイル巡洋艦やカリフォルニア級原子力巡洋艦などの大型艦のみ搭載できました。
1983年、世界初のイージスシステムを搭載したタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦が竣工するとイージスシステムに適応したSM-2の改良型ブロックⅡが登場します。ブロックⅡの射程は70kmながらイージスシステムによって同時に200目標を追尾でき、同時に2目標を攻撃できるようになります。
その後、開発が進みスタンダードミサイルSM-2ブロックⅢシリーズが登場しました。SARH+慣性誘導+GPS+終末赤外線と誘導方法が高度化し、射程も160kmを超え艦隊防空ミサイルとして十分な能力を持ちます。
発射方式もVLS(垂直発射システム)が登場し、即応能力が大幅に向上しました。改修されたタイコンデロガ級は同時追尾200目標、同時対処18目標と高性能化します。ところがあまりにも建造費、維持費が高騰したため、タイコンデロガ級の3分の2の能力に抑えたアーレイバーク級ミサイル駆逐艦が建造されました。
アーレイバーク級は同時追尾154目標、同時対処12目標と抑えられますが、コストパフォーマンスに優れていたため米海軍の艦隊型駆逐艦はスプルーアンス級駆逐艦が退役した後すべてアーレイバーク級に統一されます。
SM-3ブロックⅠで射程500km、SM-3ブロックⅡでは実に1200kmの射程を持つようになりました。SM-3ブロックⅡAは射程5000kmの中距離弾道ミサイル迎撃が可能になります。SM-3ブロックⅡは、日本が初めて開発に参加し日米共同開発の艦対空ミサイルでした。ですからSM-3は現状日米のミサイル駆逐艦とタイコンデロガ級ミサイル巡洋艦しか搭載していません。
SM-3ブロックⅡ以降は、売却する際共同開発国である日本の同意も必要になるため、売るとしてもオーストラリアかNATO諸国しか購入できないでしょう。当然日本の潜在的敵国である韓国など絶対に購入できません。
このようにスタンダードミサイルは日々どんどん進化しているんですが、これでも敵弾道ミサイルを100%迎撃することはできません。ですから盾は盾として整備しつつも、もしミサイル攻撃されれば即報復するという矛も必要になってくるのです。