
アメリカ陸軍、海兵隊が採用する標準榴弾砲です。戦車や戦闘機は好きでも火砲に興味を持つ人は少ないと思います。この榴弾砲もカタログスペックだけみれば他の同クラスの火砲と変わらず、そればかりかアメリカの前の主力榴弾砲M198 155㎜榴弾砲と比べてもほとんど変わりません。
ではなぜ同砲が採用されたかというと、軽量化によるその驚異的な機動力が理由です。155㎜クラスの榴弾砲は7tから10t位が標準。なかには10tを超えるものも少なくありません。当然牽引手段も専用の牽引車などに限られますし、空輸も大型輸送機でなければ不可能です。
M777は輸送ヘリ(CH-53やCH-47など)やMV-22オスプレイでの吊下げ輸送を前提に設計されています。全備重量はわずか4.46t。緊急時にはハンヴィー汎用車での牽引も可能です。そのためにチタン合金の採用など極限まで軽量化が図られました。さらに移動状態から発射可能になるまで2分、逆に発射状態から移動可能になるまでも2分。以前のM198榴弾砲なら6分以上かかりました。
射撃能力も、M549ロケット推進弾(最大射程30km)やM982エクスキャリバーGPS精密誘導砲弾(最大射程40km)の採用で長砲身52口径のPzH2000などと比べて全く遜色ありません(M777は39口径)。このM982は砲兵の運用を変えたとまで評された画期的砲弾で、その能力は半数必中界10m!半数必中界とは聞きなれない方も多いと思いますが、ある目標に向けて発射した場合目標を中心とした円内に50%の確率で着弾するという意味です。ですからその範囲は小さいほど命中精度が高いと言えます。巡航ミサイルトマホークの半数必中界が18.3mと言われますからその凄さが分かるでしょう。
いまいちピンとこない方もいると思うので、もっと分かりやすく説明すると40km離れたサッカー場に向けて発射した場合、半数以上がサッカー場内に着弾するということです。これで実感できましたか?(笑)たぶん、私の想像ではほとんどがサッカー場コートの枠内に着弾する。
M777はアメリカ陸軍・海兵隊の要求を受けイギリスのBAEシステムズが開発した砲で、米陸軍・海兵隊のほかにイギリス陸軍も採用を検討しています(もう採用した?)。その他、オーストラリア、カナダ、インドも採用しました。イギリスなどは西側標準のFH-70 155㎜榴弾砲を保有しているのにM777を採用しようとしているのはやはり便利だからでしょう。