作者の思想が左翼なので、戦前戦後を通じて日本に対する記述には悪意があります。その意味では、購入はお勧めできません。私も不快さから何度も読むのを止めようかと思ったくらいです。しかし、日本共産党は朝鮮労働党との蜜月時代も短く、のちには対立する関係となりましたから北朝鮮に関する記述は信用出来ます。これが朝鮮労働党と友党である日本社会党、そして日本社会民主党ではこうはいきません。彼らの書く文章なら、客観性ゼロ、北朝鮮の主張をそのまま載せるような売国的記述になると思います。
といっても萩原自身も共産党の永年党員(党員歴30年以上)であったのに党員を除籍されているそうですから、共産党の中では異端なのかもしれません。購入を勧めないのに、書評を書くという事は興味深い事実が載っているからです。
一つは、北朝鮮の建国者金日成が偽者だという事。抗日の闘士として有名だった金日成は1920年代から活躍し北朝鮮建国時には少なくとも50代以上になっていなければならないのに、実際に民衆の前に登場したのは30を過ぎたばかりの若造。これには北朝鮮の民衆も違和感を感じ偽者だと見破ったそうですが、ソ連の後押しを受けた自称金日成一派は力で民衆の声を圧殺したとか。
本書は、偽金日成の正体を生き残りの関係者に取材し満州出身の朝鮮族で抗日運動に投じ、大戦中はソ連に逃れて朝鮮人部隊の大隊長(大尉)だったキムソンジュであることを突き止めます。キムは抗日戦では有名な金日成将軍にあやかってキムイルソンと偽名を名乗っていたそうです。
これに目を付けたスターリンが、北朝鮮を支配するためにキムソンジュを金日成に仕立てて送り込んだとされます。ですから建国の始めから欺瞞があったのです。本物の金日成はどこかで戦死しているか、へたするとスターリンに殺されていた可能性もあります。
朝鮮戦争に関しても、金日成は早くから準備し全7個の正規師団のうち5個師団を38度線近くに集結させて奇襲攻撃を加えたそうですから、どちらが最初に仕掛けたのか一目瞭然です。しかも7個のうち第5、第6、第7師団は支那人民解放軍の朝鮮族兵士で構成され毛沢東の全面支援で武器弾薬付きで送り込まれたそうですから、この事実からも明らかに共産勢力の共同謀議で始められた戦争だという事が分かります。
一方、本書は北朝鮮の南進をアメリカはある程度情報でつかんでいたとしてます。しかしこれに関しては私は疑問を持っています。開戦直後の米軍の対応が後手後手に回りすぎているからです。こういう面では共産党フィルターがあるのかもしれませんね。