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ハプスブルク帝国Ⅱ  ルドルフ1世

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 スイス北東部アールガウ地方のドイツ国境付近、チューリヒからバーゼルを結ぶ幹線道路沿いにハプスブルクという地名があります。現在でも小さな城塞が残っているそうですが、ここが後に大帝国を築くハプスブルク家発祥の地だと言われています。
 
 ちなみにブルクというのはドイツ語で城塞とか砦を意味します。この城塞はハビヒツブルク城という名で、これがハプスブルクの語源になったそうです。日本語では「鷹の城」と呼びます。鷹と言ってもハビヒツとは実は鷲の意味でハプスブルク家の家紋が鷲なのもこれが由来です。
 
 ハプスブルク家が歴史上初めて文献に登場するのは10世紀ころですが12世紀には神聖ローマ皇帝ホーエンシュタウフェン家と密接な関係を結びます。といってもハプスブルク家はドイツからアルプス越えでローマに向かう街道の関守程度の小貴族でザクセン公ボヘミア王などドイツの大諸侯から見れば取るに足らない弱小勢力でした。自称伯爵ではありましたが、これは戦国時代各地の武将が勝手に○○守と名乗るようなもので何ら由緒あるものではなく、ようはその程度の存在だったと思って下さい。
 
 1249年オーストリア大公バーベンベルク家が断絶すると空位になった大公位を巡ってドイツ諸侯は長年激しく争います。有力だったのはボヘミア(現在のチェコ)王オタカル2世。しかしオタカルの大公位獲得はドイツ内に巨大な勢力が誕生する事から他の大諸侯たちの反発を受けました。
 
 オタカルに奪われる前に一時的に他の弱小勢力にオーストリアを委ね、ボヘミア勢力を排除してから正式に大公位を決めようというのが諸侯の思惑でした。そこで白羽の矢が立ったのがハプスブルク家のルドルフです。
 
 ルドルフなら一応皇帝ホーエンシュタウフェン家とも血縁があり(ルドルフの祖母がホーエンシュタウフェン家の傍系出身)、いざとなったらいつでも奪い返せるような弱小勢力であったことからボヘミア以外の有力諸侯に歓迎されます。
 
 
 こうして1273年、バーゼル大司教と交戦中だったルドルフの陣中に皇帝の使者としてホーエンツォレルン家ニュルンベルクの城代ハインリヒが訪れます。ホーエンツォレルン家は後にブランデンブルク辺境伯からプロイセン王となりハプスブルクと対立することになりますから歴史は面白いですね。
 
 ハインリヒは、陣中のルドルフ(ハプスブルク伯ルドルフ3世)に対し「選帝侯会議の結果ルドルフをドイツ王(実質的には神聖ローマ皇帝)に選出することが決まった。受託する意思が有りや無きや?」と尋ねました。
 
 ルドルフは降ってわいたような珍事に呆然とし戸惑いますが、このような千載一遇のチャンスを逃すはずもなく二つ返事で受託します。こうしてハプスブルク伯ルドルフ3世は正式に神聖ローマ皇帝(在位1273年~1291年)として即位しました。
 
 ちなみに選帝侯とは以前記事でも書いた通りドイツ王を選挙で決める有力諸侯で選定侯あるいは選挙侯とも呼ばれますが、ドイツ王はのちに神聖ローマ皇帝に就任するのが慣例でしたから選帝侯と呼ぶのが一般的です。マインツ、トリエル、ケルンの大司教(聖界諸侯)とボヘミア王、プファルツ伯(ライン宮中伯)、ザクセン公ブランデンブルク辺境伯(世俗諸侯)の七人で構成されていました。
 
 これは想像ですが、自ら神聖ローマ皇帝オーストリア大公位を狙っていたボヘミア王オタカル2世はルドルフの就任に反対で、ブランデンブルク辺境伯(ホーエンツォレルン家)がオタカルの反対派を纏めルドルフを選出したのではないかと思います。
 
 そのためボヘミア王オタカル2世は、事あるごとにルドルフを馬鹿にし皇帝として認めませんでした。皇帝になった時ルドルフはすでに55歳の老境に入っていました。しかし弱小勢力とはいえ戦上手で、バーゼルの囲みを解くや皇帝としての実をあげるべくフランクフルトに進出、臣従を拒否したボヘミア王オタカル2世と対決しました。
 
 完全にルドルフを舐めていたオタカル2世でしたが、1278年マルヒフェルトの戦いでルドルフに敗北戦死してしまいます。こうなると他の選定侯もルドルフの実力を認めないわけには行かなくなりました。ルドルフはオタカルの持っていたオーストリア大公領を手中に収め本拠地をスイスからオーストリアに移しウィーンを首都と定めました。それまでは帝国議会の開かれるケルンやフランクフルトがドイツの中心でした。
 
 皇帝ルドルフ1世は、その後のハプスブルク家発展の基礎を築き1291年没します。彼の目指した皇帝位世襲こそ果たせませんでしたが、オーストリア大公領は確保しのちの大発展に繋がりました。ルドルフ1世の即位を持って大空位時代の終わりとされます。