


一番上の表は第2次大戦中の世界の航空機用主要空冷エンジンの一覧表です。たまたま紫電改の本を何冊か読んでいて、水上戦闘機強風をもとに局地戦闘機紫電を設計するときに、わざわざ火星エンジンを下し誉に換装したのを疑問に思ったものですから。
ただ火星エンジンは最終的に離昇出力1850hpまでパワーアップしたので、海軍に定見があればこっちで良かったかもしれません。誉は確かに2000馬力級エンジンでは驚異的に直径が小さく夢のエンジンともいえましたが、その分メンテナンスが難しく戦場での過酷な使用に耐えられませんでした。一方、火星は大きいだけに頑丈で技術の蓄積もあるため稼働率ではこちらの方が上でした。
ところで空冷エンジンは気圧が低く酸素も少ない高高度ではエンジン出力ががくっと落ちます。火星25型でも高度5000mでは1520hpに出力が落ちたそうです。
そこで過給機とよばれるもので圧縮空気をエンジンに供給して出力低下を出来るだけ少なくしなければなりません。
これには2つの方法があって、排気管から出された排気ガスの内部エネルギーを利用してタービンを高速回転させ、その回転力で遠心式圧縮機を駆動し空気を圧縮してエンジンに送り込むターボチャージャー(排気タービン)と、エンジンのクランクシャフト(回転軸)からベルトなどを通して動力をとりだし、コンプレッサー(圧縮機)を駆動しエンジンに空気を送り込む機械式過給機いわゆるスーパーチャージャーがあります。
空冷エンジンはほとんどがこのスーパーチャージャー方式でした(間違ってたらゴメン。機械に疎いので…)。
1段2速と2段2速の違いは、2段過給の方が1段目の過給機で圧縮された空気をさらに2段目で圧縮できるためより高空性能が高いのです。1段目と2段目の間で圧縮され、高温高圧になった空気を中間冷却器(インタークーラー)で冷却するエンジンや、機械式と排気タービンを組み合わせたエンジンもありました。
そういえば2段2速過給機のR2800エンジンを装備したリパブリックP‐47サンダーボルトは、実用上昇限度12800mと抜群の高高度性能を持っていましたね。
ドイツの名エンジンBMW801装備で低~中高度では無敵を誇ったフォッケウルフFw190も、高高度で能力がガクンと落ちるために液冷のJumo213エンジンに換装したD型を開発しましたからね。こっちは遠心式スーパーチャージャー2段3速で高高度性能もばっちりでした。それがフォッケウルフ戦闘機の最終形Ta152に発展するんですから感無量です。
ところで日本に話を戻すと、火星エンジンでもっと頑張った方が良かったのでは?と素人考えでは思います。もっとも一種類のエンジンをそこまで量産できなかったから川西航空機の技術者は無限の可能性を信じて誉搭載を決断したのかもしれませんが…。
日本のエンジンごとの生産数を知りたいですね。よし今度調べてみよう!(笑)