鳳山雑記帳はてなブログ

立花鳳山と申します。ヤフーブログが終了しましたので、こちらで開設しました。宜しくお願いします。

弾丸の話  【日本戦前編】

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 いきなりマニアックな話で恐縮ですが、一般に弾丸の威力はジュールという単位で表されます。
 
 ジュールとはエネルギー、仕事量、熱量、電力量の単位でJと表記します。1J(ジュール)は1ワット仕事率を1秒間行ったときの仕事とも定義できます(ウィキペディアより)。
 
 この計算があっているかどうかは分かりませんが、某サイトによると
初速(m/s)×初速(m/s)×弾頭重量÷2000で算出できるそうです。ちなみに電動エアガンで0.8Jくらい。
 
 よく拳銃弾でもマグナム弾はライフル弾より威力があると勘違いしている人がいますので参考までに書いておくと357マグナム弾でだいたい1000Jだそうです。44マグナム弾で1500Jくらい。一般的な拳銃弾の9㎜パラベラムで500J。一方現在主流になっている5.56㎜NATO弾は2000J以上あります。一昔前の7.62㎜NATO弾だとなんと3300J以上ありました。
 
 これは弾丸の直径は拳銃弾より小さくても装薬量が多いからです。片手撃ちもできる拳銃より、両手でしっかり持って全身を使って撃たなければいけないライフルのほうがより威力のある弾丸を撃てるということなのです。
 
 
 
 前置きが非常に長くなりましたが(苦笑)、大東亜戦争期の大日本帝国陸軍の主力小銃はボルトアクションの三八式歩兵銃でした。
 
 使用弾丸は6.5㎜弾(威力2600J)です。当時の列強の歩兵小隊編成では分隊ごとに軽機関銃分隊支援火器として付きました。緊急時にはライフルの弾を寄せ集めて軽機関銃に融通しないといけないので通常共通の弾丸が使用されます。
 
 日本では同じ6.5㎜口径の十一年式軽機関銃、九六式軽機関銃が開発されました。
 
 ドイツの例ですと7.92㎜モーゼル弾をKar98K ボルトアクションライフル、MG34MG42汎用機関銃で使用しています。
 
 
 ところが支那事変が勃発すると、現地部隊から6.5㎜の九六式軽機関銃では威力と発射音が小さすぎて支那兵が逃げていかないと不満がでます。
 
 そこで九六式の機構はそのままに口径を7.7㎜に増大した九九式軽機関銃が開発されます。軽機関銃・ライフル共通弾の原則からこちらも7.7㎜口径の九九式小銃も制式化されました。
 
 
 一見良い傾向だと思われる方もいらっしゃるでしょうが、これは大失敗だったと一部の戦史家から指摘されているのです。といいますのも体格が欧米人に劣る小柄な日本人には7.7㎜でさえ大きすぎたからです。
 
 7.7㎜弾を撃つと、肩を蹴られたような強い衝撃があったと伝えられます。そのため射手は引き金を引く時緊張して体を固くします。そして撃つため所謂ガク引きになり銃口がぶれて命中率が悪くなるのです。
 
 一方、マイルドな衝撃の口径6.5㎜の三八式歩兵銃はよく当たったと証言されています。威力をとるか命中率をとるか?悩ましい問題ではありますがさらに致命的な事は同じ口径7.7㎜の九二式重機関銃と弾の互換性がないという欠陥がありました。
 
 だったらなぜ7.7㎜を採用したのか意味が不明です。陸軍に兵站の感覚がなかった証拠でしょう。同じ7.7㎜で二種類の弾丸を使用しなければならなかった前線の将兵は気の毒です。ただでさえ脆弱な日本の補給能力はこのためにさらに悪影響を受けました。しかも完全に九九式小銃に切り替わったわけではないので三八式歩兵銃の6.5㎜弾まで加わると3種類です。
 
 私は最初から6.5㎜で通した方が良かったと思います。現場に無用の混乱が起こりませんから。軽機関銃の口径を増大させるより擲弾筒の多数配備など別の手段で対処したほうがより正しい選択だったように思います。
 
 7.92㎜モーゼル弾で統一したドイツの先見の明に見習うべきでした。アメリカのように強力な補給能力を有する超大国とは違うのですから…。
 
 
 それにしてもドイツ人って平均体格が大きいんでしょうね。7.92㎜のライフルを平気で撃つんですから(苦笑)。