鳳山雑記帳はてなブログ

立花鳳山と申します。ヤフーブログが終了しましたので、こちらで開設しました。宜しくお願いします。

書評 「古代中国と倭族」 鳥越憲三郎著 中公新書

イメージ 1
 
 最近の歴史記事の傾向から「鳳山最近古代アジア史に凝ってるな?」と思われた方、正解です!(笑)
 
 私はどうも凝り性でして、一つのテーマに興味を持つとそれを徹底的に追及しないと気が済まない性質なんです。しかし同時に飽きっぽいのでそれが最長でも一月続かないという欠点があります。
 
 凝り性で粘り強かったら今頃大学者になっていたかもしれません(苦笑)。飽きっぽいばかりに無駄に守備範囲が広いだけのつまらないちょっと物知りくらいで終わりました(爆)。
 
 
 ま、冗談はさておき前回前々回の歴史記事で稲作と鉄器の伝播の歴史を考察しました。それが自分なりの勝手な解釈でしたので学問的な裏付けが欲しいと思って買ったのが本書です。
 
 夏王朝の出自(私は長江文明発祥説、本書は黄河文明発祥説)に対する見解こそ違いますが、それ以外は「我が意を得たり」と思う事ばかりで、自分の勝手な推測があながち間違いでなかったと分かっただけでも収穫でした。
 
 
 本書では稲作を行い高床式住居に住み、家に入る時は靴を脱いで上がる、など共通の特徴を持った所謂稲作文化圏に属する民族を総称して「倭族」と言っています。
 
 倭族と越族の古代言語上の共通点など私にとっては未知の知識もありとても興奮しました。
 
 筆者は、栗栽培から麦作に移行した黄河文明圏の民族と稲作を中心にした共通する文化圏をもつ民族を比較し両者は明らかに異質だと断じます。しかも倭族は長江流域から東南アジア、ビルマまで広がりを持つ人々であったと壮大な説を展開しています。倭族に属するのは越族ばかりでなくタイ族雲南少数民族、そして日本人も同じ仲間だそうです。
 
 
 日本に稲作を伝えたのはこれら倭族の人々であり、東シナ海を渡って日本や朝鮮半島に住み稲作文化をもたらしたのだそうです。筆者は弥生人を倭族に比定しています。ですから半島南部に住んでいた人々と日本列島に至った人々はもともと同族なのだそうです。この場合の倭族とは長江文明の末裔、あるいはその後身である越王国の末裔を指します。
 
 稲作をもたらした倭族=弥生人を解明すれば日本古代史の様々な謎が分かる気がします。
 
 
 実際の発掘データーをもとに断じているのでとても興味深く、説得力があります。そして同時になかなか考えさせられる良書です。古代アジアの謎に興味ある方、一読をお勧めします。