鳳山雑記帳はてなブログ

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書評 「ジャガイモのきた道―文明・飢饉・戦争 (岩波新書) 」山本紀夫著

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 我々が日常口にするジャガイモの知られざる歴史を記した名著です。
 
 いつもちょっと堅い政治経済の本か思いっきり趣味に走った戦史関係の本、あるいは歴史関係の本しか読まないんですがたまにはこんな本もいいですね。知らない事ばかりで驚きの連続でした。
 
 
 ジャガイモは原産地アンデス、寒冷地に強いことから品種改良を重ねられ現在の形になったのが今から5000年前。1000万の人口を誇ったといわれるインカ帝国を支えたのはトウモロコシではなくジャガイモであったという考察はとても興味深かったです。
 
 
 一般的イメージではトウモロコシこそインカ繁栄の大本だと思われがちですが、実は標高3000メートル以上では栽培に適さず、寒冷で荒れた土地でも収穫できるジャガイモを栽培する事によって人口を支えたのだそうです。
 
 そういえばチチカカ湖は標高4000メートルくらいでしたよね。
 
 ジャガイモはスペインがインカ帝国を征服したことから欧州にもたらされましたが、初めは聖書にない食べ物だという事で忌み嫌われたそうです。
 
 ところが何度か欧州を襲った飢饉によって、荒れ地でも栽培でき寒さに強いジャガイモの有効性が認められ、特にドイツなどではひろく栽培されたそうです。
 
 
 ただ良い事ばかりではなく、アイルランドではジャガイモの伝染病によって食糧が自給できず100万人の餓死者がでたこともあったそうです。これは単一品種しか栽培していなかったための悲劇でした。
 
 一方、本場のアンデスではこういう伝染病に対するリスクにも対応するため、収穫量は少なくても伝染病に強い品種を何種類か栽培しているそうです。
 
 ジャガイモはイメージと違って近代になってから爆発的に世界に広まったようです。イモ類は日本ではあまり人気ありませんが(特に戦時中米不足でイモばっかり食っていた年寄)、荒れ地でも栽培でき収穫量も望めることから日本でももっと栽培すべきだと思いました。
 
 食料自給率アップのためにも!