文春文庫「占いを信じますか?」という本は、暇つぶしに読むにはもってこいの本です。しかもなかなか考えさせられます。この話も十一代垂仁天皇が夢によって皇位を継いだ不思議なエピソードです。
第十代崇神天皇は大和政権を確立した天皇とされますが、二人の皇子がおりました。どちらに政権を譲るか決めかねていた天皇は、ある日二人の皇子を呼んで「今夜夢のお告げを受けるように」と命じました。
二人は斎戒沐浴して、祈りを捧げてから床につきました。あくる日二人は報告に参内します。
兄の豊城命の見た夢は『大物主の社がある三輪山に登り、東へ向けて8回矛を向け、8回太刀をかざした』というものでした。
一方、弟の活目尊は『三輪山の頂で縄を四方にはって粟を食い散らかす雀を追い払う』という夢でした。
通常なら兄の夢のほうが霊験あらたかのように思いますが、崇神天皇はそう考えませんでした。兄は東国を治めるだけの力量しかないが、弟は四方に気を配ったことから天皇にふさわしいと解釈しました。こうして活目尊は立太子され十一代垂仁天皇になります。
垂仁天皇には、夢に関してもうひとつエピソードがあります。ある日天皇が『皇后の兄の館から雨が降ってきて、銀色の蛇が首に絡みつく』という夢を見、不思議に思って皇后に話したところ、彼女はさっと顔色を変えて、泣きながら兄の天皇暗殺計画を白状したそうです。
なんとも不思議な話ですが、古代人は夢で未来を予知するような感性をもっていたのでしょうか?