
たまたま歴史群像2026年2月号にマーケット・ガーデン作戦の連合軍戦闘序列が載っていたのでご紹介します。と言っても歴史群像には米軍の連隊番号までは載っていなかったので、例によって私が一番信頼する海外軍事サイトの戦闘序列表から転記しました。これはネプチューン作戦(ノルマンディー上陸作戦)の時の編制ですが、おそらくこの時も変わっていないと思います。ちなみに各空挺師団にはほかに軽砲大隊などの支援部隊も入っているんですが煩雑になるので省略しました。
マーケット・ガーデン作戦とは往年の大傑作戦争映画「遠すぎた橋」でも描かれた、連合軍勝ち戦の中で大失敗した作戦です。目覚ましい戦果を挙げるアメリカ軍に対しノルマンディー上陸作戦以来目立った働きのないイギリス軍に焦った第21軍集団司令官モントゴメリー元帥が、功に逸って打ち出した無茶な作戦で、大規模な空挺降下で占領した要衝アルンヘムに地上部隊が進攻して合流し戦果を拡大するという素人目で見ても成功の可能性が低い作戦でした。
当時の最前線からアルンヘムには約100㎞。地上部隊が到着するまでに碌な重装備も持たない軽師団である空挺部隊が持ちこたえなければなりません。そして実際、地上部隊が到達する前にアルンヘムの空挺部隊はドイツ機甲部隊の袋叩きに遭い大損害を出して撤退を余儀なくされました。
私のおぼろげながらの映画の記憶では、英軍が主攻で米軍が助攻みたいな役割だったと思っていましたが、この編制表を見るとむしろ主役は米軍です。こんな無茶な作戦、よく連合軍最高司令官のアイゼンハワー元帥が許可したなと思ったんですが、歴史群像の記事によると、さしもの連合軍もノルマンディー以降戦線が伸びきったことにより補給が停滞しアイゼンハワーは輸送機による大規模な空輸を計画していたところ、肝心の輸送機群を空挺部隊用に取られ、モントゴメリーのごり押しを利用してマーケット・ガーデン作戦をわざと失敗させることによって輸送機群を取り戻そうと意図していたとか。
輸送機群はC-47スカイトレイン1300機、ダコタ(C-47のイギリス軍名称)180機、大型グライダー曳航用のスターリング重爆改造機300機という膨大なもので単純計算で1日5000トンもの空輸能力を持っていたそうですから、アイゼンハワーの気持ちも分かりますが、大を取るために小の空挺部隊を事実上見殺しにしたアイゼンハワーの意図は非難されても仕方ありますまい。その前に、そもそもこんな無茶な作戦を勝手な功名心から考えたモントゴメリーが一番悪いですけどね。
映画では遺族に配慮したのかモントゴメリーは冒頭の実際の映像以外一切出てきませんが、モントゴメリーの意を受けて実際に軍を動かすダーク・ボガード演じる第一空挺軍司令官ブラウニング中将が徹底的に悪役として描かれています。ブラウニングの遺族には配慮しなかったのかと思いますね。私見ではブラウニングは悪くないと考えています。彼は無茶な上司の要求に忠実に応えようとしただけで、一番の責任は言い出しっぺのモントゴメリーにあるでしょう。モントゴメリーの作戦に反対しなかったという責任はあるでしょうが。一応反対したものの強烈な個性のモントゴメリーに押し切られただけという可能性はありますが。
「遠すぎた橋」は勝ち戦の中での失敗を描ける欧米の余裕さえ感じさせる映画でした。