エルドラド、直訳すると黄金の男。南米大陸に伝わる黄金郷伝説です。大航海時代のヨーロッパ、とくにスペイン人の間に広まりアマゾンの奥地に黄金郷があると信じられ多くの探検家がジャングルの奥地に踏み入れましたが、命を落とす者も多くエルドラドが見つかることはありませんでした。
なぜスペイン人たちが黄金郷伝説を信じたかですが、フランシスコ・ピサロがインカ帝国を征服した時に遡ります。ピサロは、インカ帝国最後の皇帝アタワルパを捕らえました。アタワルパは「自分を解放してくれたらこの部屋いっぱいの黄金を渡す」と約束します。皇帝を人質に取られたインカの人たちは、彼を救うために各地から黄金を持ち寄り、3日も経たないうちに部屋いっぱいの黄金が集まりました。
莫大な黄金に驚いたピサロでしたが、アタワルパを生かしておいたら抵抗の象徴とされ担ぎ出されるのを恐れ結局殺してしまいました。これだけの莫大な黄金が短期間で集まるのならもっとたくさんの黄金を蓄えた金山なり黄金都市があると信じたピサロはインカ帝国各地に探検隊を派遣します。しかし黄金は見つからず、ピサロ自身も征服後の権力争いで殺されました。
ところで、話は変わりますがインカ帝国の領土に接する現在のコロンビア(南西沿岸部の一部がぎりぎりインカ帝国領)、首都ボゴタあたりにムイスカ族あるいはチブチャ人とも呼ばれる先住民族がいました。2005年の調査で14000人ほどの少数民族ですが、当時(15世紀ころ)どれくらいの人口がいたのかは分かりません。
ムイスカ族には不思議な儀式がありました。首都ボゴタの北東45㎞、コルディエラオリエンタル山脈に囲まれた地に直径700mほどの円形の湖(というか池)グアタビタ湖があります。美しい緑色の湖水をたたえる観光名所ですが、ムイスカ族はここを神聖な湖と考えていたそうです。
ムイスカ族の首長が全身に金粉を塗り宝物を湖に捧げる儀式を行っていました。まさに黄金の男(エルドラド)です。おそらくこの話とアタワルパの黄金の部屋の話が混同され黄金郷エルドラドの伝説が広まったのかもしれません。
ところでムイスカ族もまたインカと同様ミイラを作る風習があり、火と煙で乾燥させた遺体の口にエメラルドを含ませ布で包んでミイラを作っていました。もともとこの地はエメラルドを含む貴重な鉱物資源の宝庫で金も採掘されていたそうなのです。ですからグアタビタ湖の湖底を浚えば莫大なエメラルドなどの財宝を見つけることができると思いますが、ムイスカ族にとって神聖な場所なのでそんな罰当たりなことをしたら殺されるでしょう。
結局、伝説は伝説としてそっとしておくのが良いのかもしれません。