また、新たなシリーズを始めようとしてます。私が中国にはまったきっかけは三国志なんですが、中国の歴史自体に興味をおぼえ史記、漢書、春秋左氏伝などを読みました。中には大変面白いエピソードが詰まってますので、これを紹介して皆さんに興味を持ってもらい古典に触れていただけるようになれば幸いです。
古典を知ってると便利ですよ。高校の漢文でも話の内容を知っているので何を書いてあるかわかりますし。ただ詳しくなりすぎて、テストの問題自体に疑問をもち、このときの主人公の気持ちは設問の通りではないはずだ、などと答案に書いたら駄目ですよ。むかし、世界史の試験でマキャベリの問題が出たとき先生に「貴方の解釈は間違っている」と、答案に書き大目玉を食らった経験のある鳳山が言うのですから間違いありません。そういえば、文学史の試験でも○○日記を「長七郎江戸日記」と書いて怒られましたが、、、(これはワザとです。)
前置きが長くなりましたが、呂子春秋という書物を最近読みました。秦の始皇帝の宰相だった呂不イ
(漢字見つからず)が食客3千人を動員して編纂したもので、特定の思想に染まらず、一種の常識的解釈で書かれている本です。
本日紹介するのは春秋時代の名君の話です。宋の国に景公と言う人がいました。ある日景公が天文を見ていると火星(古来凶星といわれる)が心(中国占星術の星座)にとまっている事に気付きます。心宿は天文では宋の国をあらわしますので、恐れた景公は天文官を呼んで下問します。
「火星がわが宋の国をあらわす心宿にあるが、どのような予兆だろうか?」
天文官は答えて曰く
「火星の出現は天が宋の国を罰しようとしているのです。その災過は君主である貴方にふりかかるでしょう。」
公「何か打つ手はないだろうか?」
天文官「禍を宰相に移すこともできますが?」
公「宰相は国家になくてはならない人間だ。これを殺す事ができようか?」
天文官「それでは民衆に移しましょうか?」
公「民衆が死んだら、私は誰の君主になれば良いのだ。それぐらいなら私が死んだほうがましだ。」
天文官「では、今年の収穫に移しましょうか?」
公「収穫が悪ければ人民は飢えて死ぬ。君主でありながら人民を殺して自分だけが生き延びようとする。そのような者を誰が君主として仰ごうか。私の運命は尽きた、もう何も言うな。」
天文官は、急いで退き頭をたれて言いました。
「私は公にお祝いを申し上げます。天は高みにありながら下をみております。今、公は立派な事を三つ言われました。天はきっと公をお褒めになります。今夜火星は三舎を移し、公は21年間長生きする事になるでしょう。」
公「どうしてそれが分かるのか?」
天文官「公は三つ立派な事を言われ、天はそれに三つ褒美をお与えになります。星座にはそれぞれ七つの星があります。一つの星の間を通るのに一年かかりますから三七二十一年かかるわけで、そのように申し上げたのです。私が庭先に出て星を観察しましょう。もし火星が移動しなかったら私を罰してください。」
公「よし。」
はたして、この夜火星は三舎を移動しました。
いかがでした。おとぎ話のようですが面白いでしょう?古代の中国人はこのように「徳」というものをたいへん重視していたのです。徳は現代でも通用します。願わくば現代日本の政治家に爪の垢でも煎じて飲ませたいぐらいです。